2018年01月27日

アイスマン。ゆれる

アイスマン。ゆれる
梶尾真治   光文社   2008.3
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「アイスマン」とは月下氷人のこと、縁結びの神、転じて仲人に使われる。主人公の愛称である。
 祖母からの形見分けで貰い受けた文箱があった。その中には《傀儡秘儀 清祓へ》の古文書が入っていた。その他、おまじないの小道具も入っている。そのおまじないは男女の仲を取り持つ。
 主人公がそのおまじないをすると、男女が相思相愛の関係になるが、思わぬ事態となる。
 それから15年。30歳を過ぎた。
 仕事と恋と友情の悩みで揺れる3人の女性。そして主人公には、病弱な母親の世話の悩み。さらにあのおまじないの後遺症の問題があった。三回目には死を迎える可能性が高いのに、親友におまじないを依頼される。
 悩みは誰もが抱えるような悩みだ。しかし、主人公は人情味はあるが、なかなか思い切れない性格。それだけの事情があれば主人公でも断れそうなもの。でも断り切れず心が揺れる。それを陰から見守る母親と大叔母がいる。
 ラストは意外性があり、著者らしい、切なさほろ苦さのあるハッピーエンド。

 この本を読む前に、翻訳物の超長編を読もうとした。ところが100ページも読むと読むのが嫌になってきてやめた。やたらに長いのに意味不明。このエピソードは伏線なのか、そんなにいろいろと伏線を張られても覚えられない。必要なのか。そんな疑問が続くのだ。
 その点この本は無駄がなく、必要な話ばかり。だから読みやすい。
posted by たくせん(謫仙) at 10:05| Comment(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月16日

怨讐星域

怨讐星域
梶尾真治   早川書房   2015.5
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 地球が太陽フレアに飲み込まれてしまいそう。
 それに気づいた某国の大統領は家族や有力者たち三万人で、密かに地球を脱出し、172光年の彼方にある、地球によく似た星まで行こうとする。
 残された人たちの中に天才がいて、ジャンプ(ワープ)する機械を発明し、ジャンプして先回りする。これは危険が伴って、無事に着いた人は数えるほど。
 ここで疑問がいくつか浮かぶ。
 
 172光年を旅行するのに宇宙船は1Gで加速を続け、中間点で逆に1Gの減速をして、常に1Gの圧力がかかるようにしている。これでエネルギーは足りるのか。
 わたしには計算できないが、1年間1G加速し、その後は加速はやめて自転で1Gにして、最後に1年かけて1Gで減速すれば200年ほどで到達できるようだ。
 問題はそのエネルギーだ。宇宙船全てをエネルギーに変えても無理と試算した人がいる。化石燃料ではない。宇宙船内の物質をエネルギーに変換してである。わたしには検証できない。
 船内は人は数代にわたる。その生活物資は船内でリサイクル生産するが、船の燃料は尽きているようだ。
 その巨大な宇宙船が、よく一財団で秘密裏に製造できたもの。
 172光年も彼方に、地球によく似た星がよくも見つかったもの。
 ジャンプ装置が短期間でよく製造されたもの。
 これらの疑問はできたと仮定して、SF世界が展開する。

 ジャンプした人たちが、裏切られた怨みを飲んで、復讐を合い言葉に一から文化文明を築く。しかし、代が進むとその意識は観念的になっていき、心の中で怨みはなくなる。
宇宙船内でも世代交代し、それなりの生活をしている。捨ててきた人たちのことなど、ほとんどの人は気にかけていない、知らないだろう。
 この両者の生活ぶりを交代での連作短編集である。わたしの知っている伝統的なSFである。
posted by たくせん(謫仙) at 12:21| Comment(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月10日

猫の傀儡

猫の傀儡
西條奈加   光文社   2017.5
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 江戸時代の「我が輩は猫である」だ。
 猫が多くて、通称猫町に暮らす野良猫のミスジは、憧れていた順松の後を継いで傀儡師となった。町内の猫の相談相手となる。
 人間相手の事件だと、猫だけではどうにもならない。人間の傀儡を操って解決することになる。
 暇で、勘がよくて、数寄心の持ち主で、猫好き。こんな人物を傀儡にして使う。
 猫の世界でも、人の世界のような組織があるのが可笑しい。猫情もあれば知識もある。
 小さな事件を解決していくうちに、それを通した大きな事件を解決してしまう。
 話は主人公ミスジの視点で進んでいく。話があちこちに飛ぶ猫の話を、上手く誘導したりして、探偵よろしく事件を推理したり。
 傀儡に選定された阿次郎は、頼りない男のようだが、江戸っ子らしく、やるときはやる人物。

 これは続きが読みたくなる話だ。
posted by たくせん(謫仙) at 14:12| Comment(2) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする