2021年03月25日

ヤマンタカ

ヤマンタカ 大菩薩峠血風録
夢枕 獏   KADOKAWA   2016.12

    2021.3.25.jpg   
 あの有名な中里介山の「大菩薩峠」の改作版とでも言うのだろうか。
 大菩薩峠は、初めの部分を読んだが、その後は読んでいない。あまりおもしろいとは思わなかった。名作と言われるのに、読み終えた人はほとんどいないのではないか。
 何度も映画化されている。
 大菩薩峠のストーリーは支離滅裂。その理由が原作のうち三分の一をカットして、カットしたためのつじつま合わせをしないで、単行本にしたためという。しかも未完。
 この大菩薩峠のはじめの部分の、御岳神社の奉納試合とその前後を、夢枕獏流に改作した。
 名作(?)をいじるな、という声があるかもしれないが、わたしには名前のみの名作に息を吹き込んだと思える。
 音なしの構えに形をあたえた。そして真剣の恐ろしさを巧みに表現している。道場の木刀でも死ぬ場合があるが、真剣は次元の違う恐ろしさがあって、真剣勝負の強さは道場での強さとは違う。
 人を切った経験のある人の強さ。沖田総司はその真剣に淫している。
 机竜之助は普通(?)の剣豪のように扱われている。これはちょっと不満。もっと神秘性を持たせて良い。

 題のヤマンタカであるが、「夜摩天を降す者」で、正しくはヤマーンタカ。
 梵名のヤマーンタカとは『死神ヤマをも降す者』の意味で、降閻魔尊ともよばれる。日本では「大威徳明王」。六面六臂六脚で、神の使いである水牛にまたがっている姿で表現されるのが一般的である。本体は文殊菩薩であるという。
posted by たくせん(謫仙) at 11:00| Comment(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする