2023.4.18 追記
日向夏 主婦の友社 2014.9
小説 薬屋のひとりごと を読んでいる。
異世界ものというのだろうか、仮想の国が舞台である。
意外な話が伏線となっていて結構おもしろい。作者は日向夏、推理作家だとか。
花街育ちの猫猫(マオマオ)は、さらわれて、宮廷の下女にされてしまう。年季が明けるのを期待して、医薬に詳しいことを隠している。
ことの始まりは、皇帝の多くのこどもたちが短命であり、今も苦しんでいるこどもがいたこと。この子を密かに助けたことが知られて、毒味役に採用される。
毒味役をやりながら、みずから薬を作り、多くの人を治療をする。その過程で、王宮や貴族の陰謀に巻き込まれてしまう。
中華王朝風の架空の時代。日中混合で迷うことが多い。
たとえば登場人物名が、猫猫(マオマオ)、李白(リハク)、羅漢(ラカン)、羅門(ルォメン)。わたしには判りやすいけど、どうだろう。
碁や将棋も出てくる。将棋のコマは、角行や竜王。日本将棋のようだが、成り金・成り銀という言葉には、作者は将棋を知っているのかな、という疑問が生じた。日本将棋ではなく、架空の将棋というゲームであるならかまわない。そのような説明がさりげなく欲しい。
碁では珍瓏と書き、かなは「ツメゴ」とある。珍瓏(ちんろう)と詰碁(つめご)は異なる。似ている部分もあるが、それは一部分。それで、碁も知らないのかなと思うが、碁を知っている人でも誤解している人がいるので、こちらはなんともいえない。
こんなふうに碁や将棋に関しては、微妙なずれがある。この世界ではそういうゲームと考えるか。
医薬医療に関してはかなり詳しい。もしかしたらプロから見れば怪しいところがあるかもしれない。しかしそれはかまわない。それは正しいという設定の小説だからだ。
逆にいえば、設定以外では正しく書く必要がある。(わたしは古いSFファンなのだ)
弁髪ではなく、将棋の成立年代や、サツマイモ(コロンブス以後の情報)などが登場したりするので、モデルは明朝かと思う。
大陸の中央にありながら、よく海の新鮮な魚が登場する。海は近いのか。早馬で運ぶとあるが、距離感が合わない。
漫画でもこうか? 漫画なりの変更が加えられたりしてないのかな。
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2023.4.18 追記
第4巻で碁を打つ場面あった。棋譜にとってある。それを第6巻で再現する。紙束があり、一手づつの棋譜が書かれている。
途中で失着があり、そこで終わっている。
羅漢(ラカン)と猫猫(マオマオ)が棋譜どおりに打ち、終わってから羅漢が一人で打ち、ヨセに入り、
「あとはよせだけだ」
手を止めて、
「もう勝敗は決まっている。五目半のこみを入れて、黒の一目半勝ちだ」
棋譜どおりに打つのはともかく、続きを打って、勝敗を言うのは、プロ級の高手ではないか。これは日本ルールである。しかも少し古い。
日本では、昔はなかったコミが、1934年に導入されたときは2目半であり、それから順次4目半、5目半、6目半、と改正された。
五目半だったのはおおよそ1964年から2002年までである。
計算方法の違いもあるが、中国ルールでは一子二子と数えた。現在のコミは3+3/4子(7目半に等しい)とする。コミの採用は日本より遅い。一子は2目であり、半目は1/4子と表現する。だから昔は半目はなかった。これもこの世界のルールがこうだと割り切ろう。
著者は「ヒカルの碁」で碁の知識を得たのかな。「ヒカルの碁」では五目半で通していた。
第8巻では碁の大会があるが、周辺の話ばかりで、打ち碁の話はかすめる程度。
思わぬところで碁の考察