この小説はミステリーに近い。
明朝を倒した李自成は、間もなく清に追われ、翌年死去したといわれている。
李自成には胡・苗・范・田という四人の護衛がいた。
胡が李自成の首を差し出し自分だけ助かったと言われている。実は胡が密かに李自成を助けていた。胡家ではその事実を100年間封印し、三家は誤解し胡家とはお互いに復讐を繰り返していた。
その子孫である胡一刀と苗人鳳は話し合いをしようとするが、田帰農に騙され決裂し、戦いの末胡一刀は死ぬ。胡一刀の妻は生まれたばかりの子を苗人鳳に託し自決。しかし子は田帰農に狙われ、宿の下働きの少年平阿四が助け出すが行方不明になる。子は死んだと思われていた。
二十七年後、ここから小説は始まる。
関外の長白山に武林の英雄女侠が集まった。目的は田帰農が持っていた宝の箱の奪い合い。そこに割ってはいる僧がいて、近くの玉筆山荘に誘われる。そこは絶壁の上だった。
そこで平阿四によって、上下の装置が壊され、更に食料まで捨てられ、餓死する運命となった江湖の英雄たちの、どうせ下りられないなら、こうなった理由を知りたいという、回想による謎解きである。胡一刀の死の様子は、話す人によって違う。
映画「羅生門」に似たプロットだが、その途中から、いつもの如く武術の争いになる。
最初は君子然としていた、江湖の英雄やお嬢様が、少しずつメッキが剥がれていき、大侠客も昔は強盗であったりする。胡斐によって下に下りることができ、氷に閉ざされた宝の山に到ると、宝に群がるごろつきに変じていく。
主人公であるはずの雪山飛狐こと胡斐(こひ)は、あまり表に出ない。著者はこの本の本当の主人公は亡き胡一刀であるという。
終わり方も決闘の途中で第二巻に続くと思いきや、一巻で終わっている。そのためファンの要望で結末を七つか八つ考えてみたが、やはりこれで良いのだと、加筆しなかったという。
この物語には飛狐外伝という胡斐の若い頃の話が後に出る。多少設定に差があるので、いろいろとずれがある。承知の上で、単行本にするときも調整しなかったという。
参考 あらすじなどは 雪山飛狐・飛狐外伝 を参照