2008年10月01日

東の海神 西の蒼海

  東の海神(わだつみ)西の蒼海
   小野不由美  講談社  1994
 十二国記シリーズの三作目になる。大陸の東北にある雁(えん)国の建国物語。
 今回は感想より、ストーリーの紹介になってしまいました。
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 雁は梟王が国を崩壊させて自滅。王がいない国は年ごとに荒れていくのがこの世界のならい。三十年で荒廃の極に達した。三百万の人は離散し、田畑はほとんど焦土となり、残った国民は飢えていた。そこに延王がたった。王はなにもせす、残っていた宮廷の金目の物はすべて売り払い、食料の購入に充てた。そうして二十年。ようやく田畑は緑を取り戻したところである。人口は三十万ほどになった。それでも本来の十分の一である。
 国は九の州に分割され、西の元州だけは州侯の宰相に人材を得て、なんとか酷く荒廃せずに済んでいた。経済力軍事力では国王をはるかに凌ぐ。しかも国庫は梟王が任命した高官によって蚕食されていた。
 王は麒麟が選び、人の力で決めることができない。そのため元州の宰相「斡由(あつゆ)州侯の息子」は王の上の位(上帝)を望んだ。王を有名無実にしようとしていた。
 建国から二十年、国の制度が形を整えた。高官は反乱しないように形だけ置いてあり、高官に妬まれない身分の低い者に実権をもたせ、ようやく運営していた。これから機能してくるかというところ。そこに元州の反乱である。
 元州の欠点を見抜き、元州の庶民を味方にし、元州の兵も寝返らせ、戦わずして勝つ。孫子というより、豊臣秀吉のやり方に近いか。
 これが、梟王に任命された邪魔者を取り除く、始めとなるはずである。国庫を蚕食した奸臣を追い、私蔵した物は取り返す。その力がようやくできたのであった。

 この話は悪王によって国が滅んだが、まだその時の形だけは残っている、その国を再興する話である。
 新王は莫迦のふりをし、情報を集めている。国庫を蚕食する高官には、あとで取り返すが今は預けておくと一切無視し、ただし国政の実権は取りあげる。もっとも国土は荒廃して税収もないので、奸臣には実権は魅力ないので、それで治まっている。この延王、けっこう辛抱強い。
 戦のやり方も、遠征した国軍はほとんど農民で、武器も持たず、堤防を築かせる。雨期が近づいていた。それで元州の農民を守るためでもあり、それを知った元に徴兵された兵たちも脱走して、国軍に加わる。堤防は同時に城を水攻めにするためだ。高松城の水攻めを思わせる。
 決定的な差は守将「斡由」に人望がなかった。それの象徴が王をそのままにして上帝となろうとしたことだ。王になろうとすれば麒麟に拒否される可能性がある。そうなることに耐えられない人物だった。死刑も自分の口からは言い出せない。部下が気を利かして死刑にすると、だまって褒美を与える。
 結局、実際に軍が戦う前に勝負がついてしまった。
posted by たくせん(謫仙) at 07:47| Comment(2) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「斡由」は、表面だけを取り繕う実はとても薄っぺらい人物なんですが、
いかにも自分を見ているようで、とても辛くなってしまいました。

「更夜」もとても切ないのですが、別の物語で、とてもいい味を出してます。ほんの少し登場するだけなんですけどね。
Posted by ちーねー at 2008年10月05日 01:39
人は誰でも表面を取り繕うことがありますよね。これがマナーであったり、みえであったりしますが、それは上を向くと文化にになる。下を向くと、「斡由」になる。
多くの人が「わたしも同じことがあるなあ」と思っていると思います。でも同時に文化を高める力にもなっているはずです。
上下併せてプラスになれば人間合格ですよね。「更夜」ほどにはなかなかなれません。
そんなことも考えさせる、シリーズですねえ。
Posted by 謫仙 at 2008年10月05日 10:01
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