部屋の碁盤を総動員して熱戦が行われている最中に、千寿さんが提案した。
「近くの松坂屋別館四階で秀行先生の書展が開かれているので、碁はこのままにして見に行きませんか。いま秀行さんも会場に来ています。会いに行きましょう」

書展の名は「一期一会」
12月10日(水)〜16日(火)
この挨拶状の裏側には、「迷走」「遠い」「強力な努力」「磊磊」など秀行さんらしい書がならんでいる。表をここに載せたいとお願いして、了承して頂いた。
力強い大作が並んでいる。この一期一会も一つひとつは1メートル四方ほどの大きさである。
秀行さんの本職はもちろん棋士であるが、現在は引退して、若手の指導をしている。そして書は余技の域を抜けている。多芸であることよ。
一応見終わって、別室の秀行さんのいる部屋に行き面会した。癌を患ったころから、やせ細っているが、元気な様子だった。今年八十三歳になる。
千寿さんが何人かを紹介したが、理解できたか。
会場には碁盤も並んでいる。それは碁盤商の商品だ。二面柾目で、八百万円ほど。四面柾目はなかった。あったらいくらするだろう。
これらの碁盤はすべて、四〜五寸ほどの厚みで足が着いている、畳に座って打つ形のもの。今では椅子に座って、机の上で打つのが普通。足つきの碁盤は使わない。
そのあと五階でも開かれている別な書展を見てきた。若い女性の雄渾な書にびっくり。オススメです。作者の号は「小蘭」。
さて、帰って碁を再開、終わりに近くなって、フランス・ドイツ・スイスから来た院生三人が来た。二十歳と十九歳。日本棋院の院生の会が終わって駆けつけたのだ。
ルーマニアから来た元院生もふくめて、二十人ほどで、近くの和食の店で忘年会。千寿さんの「久しぶりなので和食にしたい」との注文をいれた。
偶然千寿さんの左側の席になり、喜びすぎて、飲み過ぎてしまった(^。^))。
これで今年は終わりだが、21日にはホテルニューオータニで、別な碁会があり、わたしも出ることにした。その会の管理者に誘われたのだ。
千寿さん・高梨聖健八段・水間俊文七段が指導する。
わたしは初めて、どうなることか。