2008年12月15日

山口8 金子みすゞと仙崎

 朝のうちに長門駅近くのビジネスホテルを決め、荷物を預ける。バスで仙崎に向かった。仙崎まで二キロほど。JR仙崎線もあるのだが、次の列車まで間がありすぎる。
 仙崎といえば、漁業の町(今は長門市の一部)だが、金子みすゞで有名。
 駅前でバスをおりる。正面の道は、みすゞ通りと名が付いている。みすゞ通りを少し歩けば、金子みすゞ記念館がある。仙崎観光の看板の役割を果たしているのではないか。
 このころ、大変なことに気が付いた。カメラがやけに軽い。なんと昨日電池に充電して、カメラに戻すのを忘れてしまっていたのだ。そのため仙崎は写真がない。m(__)m

 さて、金子みすゞだが、本名はテル。仙崎に生まれた。十七歳のとき高等女学校の卒業で答辞を読んだというから、秀才なのだろう。
 二十歳のとき下関に移り、そこで金子みすゞ名で詩作し投稿した。西条八十に激賞されて、童謡詩人として活躍することになる。だが選者が変わると評価されなくなり、詩作は続けても投稿をしなくなった。
 結婚したのは二十二歳の時か。一女を得た。
 二十四歳のときに下関駅で、わずかの時間だが西条八十に会ったこともある。
 後に夫の浮気に悩み離婚した。間もなく満二十六歳で自ら生涯を閉じる(1903−1930)。享年二十八。
 つまり、下関の詩人だが、ふるさと仙崎の情景を詠んでいることが多い。
 その仙崎の家(書店)が記念館の一部として元の場所に再現されている。二階の部屋まで上がることができる。本館は幻想的。
 入館料350円。休館日は、毎月最終の火曜日(月ではない)、年末年始。

kanekobuneidou.jpg
 パンフレットより 二軒続きのようだが、両方とも記念館の一部
 この先は次のようだった。

   角の乾物屋の
角の乾物屋の
塩俵、
日ざしがかつきり
もう斜。

二軒目の空屋の
空俵、
捨て犬ころころ
もぐれてる。

三軒目の酒屋の
炭俵、
山から来た馬
いま飼葉。

四軒目の本屋の
看板の、
かげから私は
ながめてた。


 この詩のとおりの位置にこの記念館はある。ただ隣の酒屋はあったかな。思い出せない。記念館の一部になっていなかったか。
 この角の乾物屋で右に折れ、港のある通りに出る。
 わたしは、JULA出版局の新装版「金子みすゞ全集」全三冊を持っている。1996年の21刷、八千八百円。
 表紙は白で(白とは何も印刷されていない、の意味もある)背表紙に銀の箔押し。これが非常に汚れやすく、汚れたとき消しゴムで汚れを落とした。

   辨天島
「あまりかはいい島だから
ここには惜しい島だから、
貰つてゆくよ、綱つけて。」

北のお國の船乗りが、
ある日、笑つていひました。

 −以下略−

 この辨天島を小さな松島のような島と思っていたが、平らな島のようで、「綱つけて」のイメージではなかった。今では陸地と繋がって、詩の趣はない。
 この海岸の通りを青海島(おおみじま)の王子山まで歩き、仙崎の町を一望する。

   王子山
木の間に光る銀の海、
わたしの町はそのなかに、
竜宮みたいに浮かんでる。

 −前後略−

 引き返し、シーサイドスクエア(仙崎駅の近く)まで行き、青海島一周の観光船に乗ろうとした。ところが波が高いため、外海に出られない。
 昼食をとり、観光案内を眺める。青海島の一番先にくじら資料館がある。バスに乗ってそこまで行った。なんとお休み、火曜日が休館日だったのだ。予定外の行動にはよくこういうことがある。その近くに鯨の墓がある。わたしは興味がないので見なかったが、バスを待っている間に見ておくべきだった。

   鯨法会
 −前略−
沖で鯨の子がひとり、
その鳴る鐘をききながら、
死んだ父さま、母さまを、
こいし、こいしと泣いてます。


 バスで青海島の中程にある静ヶ浦(紫津浦)まで戻った。青海島は本来二つの島だったが、ここに砂が積もり陸続きになり、一つの島になったという。そこの北側は遊歩道(自然研究路、約2キロ)もあって、今回の旅行のハイライトともいえる絶景が続く。静ヶ浦には大きな駐車場(200台)もあり、それなりに観光客も来るのであろうが、この日は会ったのはふたりだけ。駐車場には車はなく、駐車場の管理人も売店のおばさんも暇をもてあましている様子。

   鯨捕り
むかし、むかしの鯨捕り、
ここのこの海、紫津が浦。

 −前後略−

 静ヶ浦で乗ったバスは長門駅の先まで行く。長門駅に帰る。
 ホテルに入り、すぐに夕食の買い物に出る。まず本屋によった。東京から4冊の本を持ってきたのだが、3冊を読み終えてしまったのだ。あと1冊の碁の本はエンドレス。ここで、岬美由紀シリーズの最新作を買う。上下2冊。新シリーズの既刊を読んでいないので、意味が繋がらないところもある。
 近くに大きなスーパーがあった。
 この日の仙崎は予定外であるが、一応行くかも知れないので、ある程度事前に調べておいてあった。しかし、青海島は予定外だった。さらに静ヶ浦自然研究路は予定外。しかも写真もない。それでも満足できる一日だった。
posted by たくせん(謫仙) at 11:52| Comment(4) | TrackBack(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
仙崎といえば、かまぼこ!だったのですが、
やはり最近は金子みすゞですね。
優しい詩風なので、人気もあります。
”みすず潮彩号”という観光列車も走っているようです。
Posted by 阿吉 at 2008年12月15日 22:19
みすず潮彩号、ありましたね。もっとも時間が合わないので乗りませんでした。津和野のSLもそうですが、それに乗るために、日程を変える気はありません。

仙崎はかまぼこ、そうでしたね。わたしは仙崎は烏賊と思っていました。それで昼食は烏賊刺し定食(^。^))。
今回の旅はよく烏賊を食べました。毎日食べていましたね。
かまぼこは食べ損ねました。材料はなんでしょう。スーパーの100円の「なんとか蒲鉾」と違って、いわゆる本物なのに。後で気が付きました。

金子みすゞを読んだのは、10年以上前、それなのにいろいろな詩のイメージが残っています。
今回引用するために、また開きましたが、こんなイメージの詩があったはずと、探して正確に引用しました。記憶にあった詩ばかりです。
Posted by 謫仙 at 2008年12月16日 20:07
「金子みすゞ全集」をお持ちなんですね。
お好きなんですね。
私も、好きな詩人なのですが、なぜか詩集を持っていません。

大好きな詩人の足取りを追う、感慨無量だったことと思います。

カメラのバッテリーがないと、カメラがうらめしくなります。
邪魔なだけですので・・・

信州の冬は寒くすぐバッテリーが上がります。
予備を持っても不足になることも・・・
そのため私は、単三使用のカメラにしています。
充電式の電池を使っていますが、いざという時は、アルカリ電池を買えば何とかなりますので・・・
Posted by オコジョ at 2008年12月18日 18:42
金子みすゞの詩はなぜか、記憶に残ります。わたしが本を読み終えたころ、NHKで特集があり、金子みすゞの生涯の様子が判りました。そこで取りあげられた詩は気になっていた詩ばかり。貧しかったけれども上品な日本の郷愁のような感じがします。

バッテリーは寒さに弱く、寒冷地の冬は大変ですね。わたしのは決まったバッテリーで、普通の電池では代用できないんです。夜に充電すれば、一日持ちますので、強力ではありますから、安心して使えます。でも入れ忘れにはどうしようもない。
これも旅の想い出ですね。
Posted by 謫仙 at 2008年12月19日 07:44
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