2009年01月23日

ガダラの豚

    中島らも   実業の日本社   1993.3
 千里眼−洗脳試験を読んで、この本を思い出した。
 宗教団体における大量殺人を扱った小説である。

 わたしがこの本を読んで間もなく、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起こり、まるで予言書のような気がした。
 わたし自身、あの時間にあの場所を通るのである。偶然休暇をとって、あの日だけ、そこを通らなかったので、被害を免れた。
        gadara.jpg
 
 さて、本題。
 アフリカの呪術者や密教の高僧などによる呪術合戦である。
 最後に大量殺戮が行われる。

 題名はマタイ伝にある、豚の大量死の話からとっている。

 なお、アフリカ人について、
「まさか現代でも、裸で毒矢を持ってサバンナを走り回っていると、考えているのではあるまいな」
 そんな会話にクスリと笑ってしまう。

 呪術を必要とする社会の意味を、考えさせられる小説である。
 例えば、水の問題がある。

 アフリカのある土地では水を汲んできて、一定の時間が経たないと使用しない。飲むときは、その水を勧めた人が飲んでから、他の人も飲む。住血吸虫の危険があるからだ。
 それは目に見えないため、どんな水も汲んでから一定の時間をおく。その間にこの目に見えない悪魔の虫は死に絶える。このようなことが生活のあらゆる所にあれば、呪術が必要になるのだ。
posted by たくせん(謫仙) at 07:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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