

張愛玲文集 傾城の恋
張愛玲 吉林撮影出版社 池上貞子 訳 平凡社
2000.1 20元 1995.3
中国語 簡体字
この文集には「傾城の恋」のほかの短編も入っている。この傾城とは、日本軍による香港占領を指す。それによって恋愛が成就する物語である。
この本は西安の女子留学生からプレゼントされた。現在でも女子学生に人気があると言っていた。
恋愛小説なので、旧弊を破って世間のしがらみを脱しようとする様子が、共産主義から解放されたいという希望に沿っているのではなかろうか。
この小説と「山居筆記」をいただいたのだが、小説は手強く、長い間積ん読になっている。
わたしには読めなかったが、西安の女学生が読んでいるということは、普通話(共通語=現代中国語)が判れば、読めない本ではないと思われる。普通話に翻訳されているかも知れないが、そこまでは判りかねた。
小説は戦中に書かれており、普通話の成立は戦後である。ちなみに普通話は北京あたりの言葉が中心であり、上海語は方言で、全く判らないらしい。上海の人が普通話が判るのでなんとか通じるという。
あるとき、「傾城の恋」の和訳が出ていることを知り、本屋に注文してみたが、在庫はなく再版の意志もない、という出版社の返事であった。ところが区の図書館にあり、借り出すことができた。
その「傾城の恋」には次のように張愛玲(Zhang Ai ling)を紹介している。
1920年ないしは21年、上海生まれ。李鴻章の曾孫にあたる。39年より香港大学に学ぶが、香港陥落により中断。上海に戻り、文筆生活に入る。「傾城の恋」「金鎖記」など話題作多数。人民共和国成立後、香港を経て、55年アメリカへ。香港時代に書いた「赤地の恋」と「秧歌」により、反共作家のイメージをつくった。50年代後半に、アメリカ在住の中国人研究者によって高い評価を与えられ、その後一貫して台湾、香港ではもっとも人気のある作家として読まれ続けている。
1995年9月(または8月)に亡くなっている。この時74歳。
-----------------------------------------------------
傾城の恋
上海の旧家の白家は、出戻り娘の流蘇の持ってきたお金を使い果たし、間接的な表現で追い出そうとする。
流蘇は妹のお見合いの日に、その相手イギリス帰りの実業家范柳原とダンスを踊り、見初められる。
徐夫人に香港に誘われ、香港に行くと范柳原が待っていて、そこでデートを重ねる。
一度は上海に戻るが、もはや白家には身の置き所がなく、改めて香港に出てくる。そこで第二次大戦が始まり、香港は日本軍の攻撃を受け落城する。それが引き金となって二人は結婚することになる。