2009年05月17日

うつくしく、やさしく、おろかなり−私の惚れた「江戸」

杉浦日向子   筑摩書房   06.8
 江戸の蘊蓄集である。
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 杉浦さんは1980年、ガロで漫画デビュー。
 1983年、漫画家を引退し、江戸風俗の研究家となる。もちろん漫画時代も研究していて、杉浦さんの書く漫画は時代考証が優れている、と石川英輔さんが絶賛している。(「合葬」のあとがき)
 漫画家引退後は隠居と言っていたが、この時すでに難病を抱えていたのだった。その後、テレビ番組「お江戸でござる」で、江戸風俗の解説をしていた。若い女性なのにどこか細く、衰えのようなものを感じた。それが難病が原因であったのだった。わたしが杉浦さんを知ったのはこのころ。
 この題名の「うつくしく、やさしく」までは平凡だが、「おろかなり」こそ、杉浦さんの惚れたところではなかったか。
 当時の長屋暮らしは台所はなく、原則として外食であった。そのため、エンゲル係数は100パーセントに近い。家賃と食費で、使ってしまう。外に出れば、24時間いつでも食事ができた江戸の町。そんな貧しい生活でも、精神的にはそれなりに豊かな様子を解説している。
 粋(いき)と粋(すい)の違いなど、いかがだろう。
 粋(いき)は江戸の言葉。生活の外のプラスアルファ。だから粋(いき)な家庭といいうものはないとか。その代表は通人を気取る人の着る黒の着物。
 粋(すい)は感覚的に鮮やかなもの。上方の言葉。西陣織などの豪華さ。
 多芸多才で、持ち駒がたくさんあるのが「すいな遊び」。「いきな遊び」は隠し球があるということ。一生人に見せなくてもいき。藝を持っていても、ひとには見せない、知らせない。だから「いきな人だねえ」は過去形になる。
 そうなると、わたし(謫仙)の生活も「いきな生活」といえよう。などと自己申告するのは「いき」ではない。
 さて、江戸時代の特徴は、不況がなかった。不思議に思う人がいるかも知れないが、不況は物が売れないこと。生産が消費量より多くなってしまった状態をいう。江戸時代はほとんどは注文生産。売れ残りは少なかったのだ。注文生産なので、無駄というのが少ない社会だった。まあそれだから貧しいともいえる。

 そんな江戸の風俗をいきいきと書いた、粋な本です。
posted by たくせん(謫仙) at 18:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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