2009年10月11日

囲碁いろは歌

  囲碁いろは歌   前代未聞 棋響千秋
中山典之  自費出版   1994 
        igoirohauta.jpg
 中山典之はプロ棋士だが、筆も達者で、文士としてもプロ。書いた本はすでに百冊を越える。決してタレント本のたぐいではない。その中山さんが、「この本は売れない」と自費出版した。

日本語はこんなにも美しいのか。
日本語発生二千年。空前の珍書が出現した。
弘法大師も仰天か?
いろは四十八文字の、囲碁を讃える奇跡的な歌集とエッセイ!


と帯にもあるように、いろは歌と同じように、四十八文字を使いダブらず、という歌を数百首も作ったという。この本はそのうちの85首。2首紹介する。

   空に星影 冴えわたる
   いや増す想ひ 鳴く千鳥
   君の胸打つ 夢終へぬ
   酔ふて論ぜよ あわれ囲碁

 酔(ゑ)囲(ゐ)

 なかなかのできばえではないか。
 本文ではないが、見返しにある歌をもう一首、

   いろは歌詠 名乗りあげ
   囲碁に智慧追い 夢を得ぬ
   照る月笑え 星眠れ
   吹く風止まず怎麼生と


 「怎麼生」は そもさん。
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 江戸時代に幾首かの48文字歌があるが、いいものはない。
 明治36年に萬朝報が250円の懸賞付きで集めたところ、一万余首が集まった。
 その後新作の試みは聞かず、平成になって、ここに一人で数百も作った人が現れた。しかも、内容は碁に関する歌ばかり。
 珍書に属するかも知れぬ。

 エッセイは短い。各歌の下に、縦12字、横12行のうちに収めている。
 一般論として書物には、睡眠薬代わりになるものと、面白くてて不眠症になる素晴らしい本の二種類があるように思う。  …中略… 
 借問す。君に一冊の良書ありや、と……。
 
 そしていくつかの珍瓏など。
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 この本をプレゼントしてくれた亜Qさんからのメッセージ。
 中山文士は平成5年に四十八字歌を作り始め、平成11年時点で千余首に達したそうです。還暦を過ぎてからの彼(昭和七年生)にとって、囲碁以上のライフワークになっているようです。お持ちした「新いろは歌」には囲碁に関する歌ばかり集められていますが、囲碁を離れた歌もいくつか作っています。私の手元に5首あるのでご紹介しましょう。
( )は著者本人が付けた歌の題。旧字が新字になっているのもあります。
 (新いろは歌)
 色は空なり すべて無為 常に非(あら)ざる 世を侘びぬ 
 み佛まかせ 稚児の夢 重き縁知れ 誰そや酔ふ

 (時空超越歌)
 我 奥山に 庵をあみ 酔ひさすらへば 時超えぬ
 現世の夢 今日断ちて 世尊も眠る ゐろり哉

 (迂人望郷歌)
 迂人 庵あみ 日も落ちぬ 手まくら常よ 花に風
 聴けやゐろり邊 夢の聲 誰そ故郷を 忘れ得む 

 (擬 琵琶湖周航歌)
 我も海より さすらひて 艪を任せ居ぬ 沖つ潮
 笛の音夢幻 誰そや漕ぐ 花散るゆゑに 雨いとへ

 (訣辭・無為歌)
 無爲の浅智慧 凡夫老ゆ 空音幕終へ 我消えぬ
 せめても名残 詠みにける いろは清(すが)しや 歌つどひ

 ところで、「怎麼生」の読みは「そもさん」、意味は禅問答の問いかけの言葉らしいです。
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謫仙:わたしなど「ゐゑを」と「いえお」の区別がつかないので作りようがなく、正しくは鑑賞する力もありませんが、労作であることは実感します。本人は詰め碁を作るような感覚かなと思ったりします。
posted by たくせん(謫仙) at 07:52| Comment(2) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
48文字歌というのははじめて知りました。
同じ字を使わないというのが面白いですね。
藤村などの初期の近代詩は五七の繰り返しが多いので
こういう制約がないと4行詩(最近は5行歌が流行ですが)と
いった漢字になってしまいますね。
それにしても、大変そうです。


でも、こうした制約で名歌は生れ難そうですね。
言葉遊びという感じでしょうか。
作るほうは楽しいことかも知れませんね。
Posted by オコジョ at 2009年10月12日 13:31
オコジョさん
いろは歌ほどの名歌は難しいでしょうねえ。48文字歌というのは最初に最高の傑作ができて、あとはその真似となってしまいました。
中山さんは遊びで作っていたのが、深みにはまってしまったようです。

この話はHPに載せておいたのですが、ブログに移すにあたり、大幅に加筆訂正しました。

そうそう、中山さんは上田の出身で、真田のことにも詳しいんですよ(^_^)。
Posted by 謫仙 at 2009年10月13日 06:45
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