CBSソニー出版以外での初めての出版である。そのため「長いあとがき」はない。
この短編集はエロ性が強く、詳しい紹介をする気になれない。まあ、そんな話が好きな人のためにここに載せる。
そして不気味さ、式貴士独特の不気味さがよく出ていると思う。
一つだけ紹介しよう。「海の墓」は三つのショートショートがある。その一つ。
浜で砂山を作っている少年。散歩帰りの紳士が少年に話しかける。少年は終わりにしようと腰を上げた。そこへ波が来て、砂山を崩してしまう。せっかく作った砂の城は、波が崩さずとも、汐が満ちてきていつかは壊れてしまうのを紳士は慰める。
少年は想い出を語り出す。
少年は小さいころからケンちゃんに虐められて続けていた。その少年ばかりではない。弱いものはいつも虐められ、給食の牛乳は取りあげられ……。少年はその日、海岸の別荘に来ていたが、なんとそこでもケンちゃんに会ってしまう。虐められの続きである。
そしてかなり深く穴を掘らされた。そしてケンちゃんはそこに寝て、少年は砂をかぶせさせられる。ケンちゃんは気持ちよく寝てしまう。そこで砂を充分にかぶせ、顔にもかぶせ砂山を作った。そこへ紳士が通りかかったのだ。
「FS作家倶楽部」はタイムマシンもの。いまひとつさえない。タイムマシンもののアイデアは決まっているようなもので、しかもいろいろ書かれているので、新しいアイデアはなかなか出ない。
「吸魂鬼」は魂が入れ替わる話。
「エイリアン・レター」はエイリアンの手紙による物語。って、この説明ではまるでパソコンの説明書だ(^_^)。
「カメレオン・ボール」もエイリアンもの。ロマンチックだ。これが一番よかったかな。
「触角魔」はもてない男の夢だ。読んでいて楽しくない。
「シチショウ報告」は七生報国のひねり。ある人物が一ヶ月づつ、7人の生活を体験する話。その前提が、神様との博奕に勝ってえた権利だ。神サマも疲れるので息抜きに博奕でもやろうと思う。それで熱くなって負けるのがおかしい。