恵比寿ガーデンプレイスで「プロ棋士ペア囲碁選手権2003」を見てきた。
ペア碁は男女二人ひと組で、交互に打つ。
小林千寿さんは、先週千寿会で「決勝戦にも応援に来てください」と言っていたが、残念ながら、1・2回戦で敗退してしまった。対局開始前に体調が悪いことが見て取れたが、プロにとっては体調管理も勝負の内なのだ。
場内には女性の姿が多い。
会場風景を幾つか。
風弟が時計係をしていた。落ち着いてこなしていた。
風弟は自称初段であるが、わたしより強い。学生は世間とは秤が違うので対局には注意すること。
杉内寿子八段
高齢ながら衰えは見せず、小林千寿組を圧倒した。2連勝して勝ち残る。
梅沢由香里五段
「ヒカルの碁」でお馴染みのあのキュートな笑顔が、対局時は一変して泣き顔になる。碁を見ると優勢なのだ。勝ち残る。
佃亜紀子四段
亜Qさん(千寿会会員)が声をかけた。
「一局目は緊張していましたね。二局目は緊張がほぐれていたようですが」
「そうですね。緊張しました。男性はもっと大変。敵の二人ばかりでなく、味方の女性にも気を配らなくてはならないですから。敵が三人いるようなものです」
「サインを求められた時はどんな言葉を書いていますか」
「こうです」
そう言って書いてくれた。“響流” 「こうりゅうと読みます。……」
山下敬吾五段
まるで学生かと思える幼い顔つきで、サッカー少年のように髪を逆立てていた。
「かわいいー」
なんて声がする。
武宮正樹九段
剃髪していて、どこにいても一目で判る。Uさんが「碁をはじめたばかりなんですが」とサインを求めると、にこにこして「楽しいですか」と言いながら、
宇宙 武宮正樹
と書いた。わたしとUさんが「なんと読むのかな」と首をひねっていると、通りかかりの人が「宇宙です」
武宮さんの棋風は“宇宙流”といわれています。
祷陽子五段
特筆は祷陽子五段であろう。個性の強い趙治勲九段と組んで動せず、勝ち上がる。Uさん曰く、
「他の人が趙治勲さんと組むとびびってしまう、祷さんは精神力も強い」
この二人、前年の優勝ペアです。
佃さんが言っていたようなことを、他の棋士も言っていた。 しかし、女性の気遣いも相当なものである。
一勝一敗の8組が準々決勝進出をかけて、9路盤で戦うのだが、ある高名棋士は、そのたびに「僕の番?」と訊く。女性棋士はそのたびに答えるのであるが、そういう盤外のことまで気を配らなければならない。
本戦でも、男性棋士が打ちそうになり、あわてて女性棋士が止めたシーンもあった。実際に順番を間違えた、ペアもある。なんと小林千寿さんのペアである。
小林光一九段・吉田美香七段組がベストドレッサーに選ばれた。これはファンの投票による。そして投票者の中から抽選で十名に懐中時計が贈られた。当選者の最後にSさんの名が上がった。
それを受け取りに行くとき、出場選手の前、つまり千寿さんの前を通ることになる。Sさんは言った。
「いやあ、通りにくかった。目を合わせないようにしましたよ」
「ウフフ、謫仙さんは誰にいれました?」
「千寿さん組に決まっていますよ。他の人に入れるような度胸はありませんデス、ハイ」
小林千寿・羽根直樹組は三位でした。