2009年11月11日

物語る女(栗本薫)

01.3.3記

 わたしが最も影響を受けた作家は栗本薫である。特に初期の作品における点の打ち方は、教科書代わりにしたほどである。ワープロを使うようになり、点の打ち方に乱れが生じたが、現在では手書きのころのように打つ。
 驚くのは多作である。囲碁の坂田栄男氏が作家が集まっているとき、「プロなら年に一冊ぐらい長編を書いて見ろ」と言って、皆の首をすくめさせたとき、川端康成氏は「年に一冊、そんなに書けますか」と問い返したそうである。根拠のない坂田氏はそれ以上は言えなかった、という話がある。
 栗本薫は年に二十冊以上の長編を書く。一冊書き終わらないうちに、次の小説が頭の中にできあがっているという。そのため次から次へと書いても、尽きることがない。結果が、毎月二冊もの長編を書くことになる。いったいどこでそれだけの知識を得たのか。
 司馬遼太郎は長い記者生活があった。だが栗本はいきなり小説家になっている。
   
 グインサーガ・魔界水滸伝・伊集院大介シリーズ、最近では夢幻戦記など、わたしは驚きを以て読んでいる。が、不思議なことに再読しようという気にならない。再読を始めればおもしろいのであるが、何かのきっかけで読み出すまでは、読む気にならないのだ。
 例外は「小説道場」である。これはもう四回は読んだ。また機会があったら読もうと考えている。これは最高レベルの文章指導書である。ただ、「てにをは」も使いこなせない人には理解するのは無理だ。それから純文学を最高とする人も。なぜなら彼女は純文学を文章の練習台程度にしか考えていない。「最も難しい小説は、おもしろい小説とSFである」と言い切っている。この言葉が栗本薫の全てを表していると思う。
 わたしは三田誠広の「W大学文芸科創作教室」を読んだことがある。この創作教室の卒業レベルが小説道場の入門レベルと思う。とは言っても、言葉はやさしく書いている。たとえば、
「……一番やさしい小説はなにかって。純文学に決まってるじゃん。大きな声じゃいえないけど
 こんな調子だ。これらは、小説はともかく文を書くときの参考になる。読んですぐに気がつくが、両者の小説に対する考え方はまるっきり違う。三田誠広は俗に言う純文学を小説とし、その他を通俗小説ないし物語として低く評価している。
 推薦する小説家  川端康成・三島由紀夫・梶井基次郎・大江建三郎・小川国夫・トルストイなど。

 中島梓(栗本薫)は、小説とは自分の創作した世界を物語ることという。
 推薦する小説家  司馬遼太郎・小松左京・大デュマ・アジモフなど。

 私淑できる人を見つけるのも、文章修行においては大事なことだと思う。

   参考図書
新版 小説道場  中島梓(栗本薫)  光風社出版
小説道場     中島梓(栗本薫)  新書館
 新版は新書館版の改訂版。

W大学文芸科創作教室(全三冊) 三田誠広  朝日ソノラマ
 天気の好い日は小説を書こう
 深くておいしい小説の書き方
 書く前に読もう超明解文学史
posted by たくせん(謫仙) at 07:38| Comment(2) | TrackBack(0) | 山房筆記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 こんばんは。
 ちょっとまたネットの世界で外出する元気がでてきたので、またちょこちょこ寄らせていただきます。今日は挨拶程度に。
栗本さん、グインの最終巻が来月の10日発売です。
 
Posted by 樽井 at 2009年11月11日 22:09
樽井さん。
いよいよ最終巻ですか。楽しみでもあり、残念でもあり。
毀誉褒貶は世の常とはいえ、何かと話題の多い方でしたね。
小説家は面白い小説を書くことが大事、と言うことをわきまえている人だと思います。
小川国夫など、10頁ほど読んで投げ出してしまいました。全く面白くない。日本語が素晴らしいそうだが、国語の教科書じゃあるまいし…。

ただ、なにが面白いかというと、人によって違う。わたしはわたしの面白いと思う小説を読むのみ。

いよいよ、最後なんですね。
Posted by 謫仙 at 2009年11月12日 19:50
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