2009年11月18日

プーアル茶

 プーアルは地名である。普ji-2.jpgと書く。
 いにしえより茶の産地として知られ、国内ばかりでなく、遠く外国まで輸出されている。その道は「茶馬古道」、南のシルクロードと言われている。
 今年の夏、雲南を旅行したとき、大理でプーアル茶を買った。金額は覚えていないが、二百何十元かしたように思う。こういうのは上を見ればきりがないので、適当なところで手を打つしかない。
 買ったのは小さな箱入りだが、裸のままそのあたりに積み上げてあるものもある。大家では、その巨大な塊を買い、家の倉庫に何年も置いておき、熟成させる。

cha09-1.jpg
 入れ物の麗々しさ。
  
 プーアル茶には生茶と熟茶がある。
 生茶は、緑茶を自然の状態で発酵させた茶葉。年代を経るほどに、口当たりもなめらかになる。数十年を超えるようなビンテージ品は、高価で取引されるようだが、わたしのような者には縁のない話。
 熟茶は、緑茶にコウジカビを添加し、加湿加温した環境で発酵させた茶葉。年代を経た茶葉の風味を短時間で量産できる方法。生茶に比べて色が濃く、暗褐色を呈す。一般的に販売されているプーアル茶はこれにあたる。

 プーアル茶は洗茶という淹れ方をする。洗茶は始めに茶葉を洗う作業のこと。
 プーアル茶は、外気に触れさせ自然発酵をさせる。この雑菌を殺すのだが、ゴミを洗い落とす意味もある。
 一煎目は洗茶で、熱湯で10秒くらい。それは捨ててしまう。二煎目から飲むことになる。飲むときは熱湯が普通だが、熱湯でなくてもよい。
 年代物の価値があるものには洗茶をしないものもあるらしい。洗茶は必ず必要というわけではないらしい。
 さて、能書きはこれくらいにして、開けてみることにしよう。

cha09-2.jpg
 開けてみるとレンガ状に固められた茶が入っており、ずしりと重い。長さ14センチ幅9センチ、厚みは2.7センチほど。
 削り取るための茶刀も付けてくれた。
 何か白い物が見える。一抹の不安。

cha09-3.jpg
 削ってみたら、こんなものが出てきた。残念っ。100元札ではなかった。
 これはゴミではなく、生産者や産地の証明。
   大白毫 DABAIHAO
   中國・雲南・景谷雲春茶廠出品

 繁体字だ。製造年が入っていないのが惜しい。

 日本茶は一煎目が甘くて美味しい。二煎目は渋さを楽しむ。一煎目の味が命の日本茶は衛生的に生産される。洗茶をすれば美味しさのほとんどを逃がしてしまう。
 中国茶は洗茶をする。たしかに雑菌を殺す意味もあるが、本当の理由は不衛生な生産と管理にあるのではないか。
 茶馬古道を通って、行商人によって世界に輸出された茶は、嵩を小さくするためレンガ状に固められた。そして、何年もかけて運ばれ、その地で飲まれる。だから洗茶をするのは決して不自然ではない。熟成したら殺菌するのも当然。しかもプーアル茶は本来大衆的な茶で、高級茶ではない。しかし、洗茶することを前提に、衛生に気を遣わずに扱うのは本末転倒ではないか。衛生的に作られ管理されていることが判っていたら、洗茶をしないかも知れない。

 店の中で飲んだ見本とは、かなり味が違うように感じる。わたしの淹れ方が悪いのか。
 数年前、06年ころ、投機の対象になって値上がりしたという話がある。ビンテージ品になるまで保管し高値で売るつもりだったようだ。08年には十分の一に暴落し、元に戻った。

 淹れるときは、普通の急須を使っている。
 茶碗であるが、中国の茶の碗は猪口のように小さい。わたしもまねて、猪口を使ってみた。

     puercha-1.jpg

 赤っぽいガラスの猪口なので、プーアル茶の赤が深くなり、紅茶か赤ワインのような雰囲気(^_^)。
posted by たくせん(謫仙) at 06:23| Comment(6) | TrackBack(0) | 山房筆記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
二百何十元とは高いかなと思ったのですが、レンガ状に固められ、
ずっしりと重いのですね。
名前は知っていますが、味わったことはありません。
発酵しているということは紅茶に近いのでしょうか。
ビンテージということは一寸紅茶とは違うような気がしますね。
洗茶をするというと香りよりも味なのでしょうか。
いろいろな茶があるようですね。
Posted by オコジョ at 2009年11月18日 14:00
オコジョさん
量ったわけではありませんが、250グラムくらいと思います。
けっこうな値段ですよね。
茶(湯)の色は紅茶にそっくりです。ですけど、紅茶はそのままでは渋くて飲めませんが、こちらはかなりまろやか。
茶葉は独特の発酵作用があるのですが、ここでいう発酵は、茶葉自身の発酵だけではありません。だから紅茶とは違いますね。茎も一緒に固められますが、これも意味があるようです。しかし、なぜ発酵して美味しくなるのか、本当のところはまだ判っていないといいます。
熟茶は年代物はありません。まだ技術が新しく、年代物ができるだけの時間が経っていないんです。今のところ経験則で茶を熟成させるしかないようです。

香りは判りません。わたしには感じませんが、味に影響あるので、気がつかないだけだと思います。つまり弱い香り。
中国では茶の種類は多くありますね。数え切れないほど。
日本はその中で一番美味しい茶を取り入れたので、日本茶は最高級と思います。しかしながら一種しかない。良いのか悪いのか。
全くないわけではなく、碁茶という茶がこの固めた茶と同じといいます。量は統計に載るほどにはないようです。
Posted by 謫仙 at 2009年11月18日 19:50
茶が最初に文献に出てくるのが前漢の頃だといいます。しかしその頃は葉ごと煮込んだ野菜スープのようなものです。
映画レッドクリフでお茶を入れるシーンがありますが、時代や飲み方もかなりずれていると思われます。
その後、茶葉を蒸してから固めたものを平らな円盤状にする餅茶、さらに小さく丸く固めた団茶ができます。つまり今のプーアル茶と同じものです。
しかし飲み方は、固めたものを砕いて粉にしたものに湯を注いで混ぜて飲む抹茶で、茶葉に湯を注ぐ煎茶は主流ではなかったため宋のころまで文献に出てきません。
明代になり煎茶が奨励され抹茶は一気に廃れます。喫茶人口に対し団茶の生産が追いつかなくなったのと、上流階級で行われた抹茶の煩雑な作法を新たな支配者で農民出身の朱元璋が嫌ったからかもしれません。
日本では逆にこの頃から抹茶が流行しはじめ現在に残っているというのも面白いですね。
古代の製法であるプーアル茶で抹茶をたてたらどんな味になるのかと気になるものの、洗茶の必要な茶葉をそのまま粉にして飲むのはちょっと抵抗がありそうです(^^;
Posted by 八雲慶次郎 at 2009年11月18日 20:24
間違いが有ったので書き直しです。

八雲さん
そうそうレッドクリフのお茶のシーン、シーンそのものが創作ですが、あんな淹れ方をしたのか気になっていました。いったい中国の茶道はいつごろ成立したのか。時代は合わないとは思っていました。
自分で、あの茶刀で削り、熱湯で洗ったりして茶を淹れると、確かに上品な茶ではないと思いましたね。庶民的な茶。古代から伝わる庶民的な作り方ですね。
朱元璋は良きにつけ悪きにつけ噂になるお方。日本でいいことがあると、なんでも弘法大師に結びつけるように。

>洗茶の必要な茶葉をそのまま粉にして飲むのは
これが昔は普通だったのでしょう。でも今の感覚では洗茶したい。
衛生の話を書きましたが、これは社会の基礎的な水準によって変わること。

A 口に入れるものは当然衛生的に扱うべしというレベル。
B 口に入れるものは洗って(熱を通して)口に入れるべしと言うレベル。
C 口に入れるものがあれば、衛生などかまわないレベル。

わたしはAに住む人がBに行ったゆえの想いとは思いますが、大理のお店の茶の出し方はすでにAの水準ではないかと思います。それなのに茶の扱い方についてはBなんですね。だからあえてあのように書きました。
中国はABCが混在する社会。だからこそ、いろいろな茶がある。複雑な気がします。
Posted by 謫仙 at 2009年11月21日 08:44
日本でも私の子供のころはBのレベルでした。私の田舎の話です。
平均の経済力が問題で、日本の10倍の人口で、総生産は日本と同じくらいとなれば10分の一ですか。物価表示の問題があって、本当はもっと大きいようですが、目安になります。
日本で10分の一だったころの水準と考えてみました。どうでしょうか。
現在の日本はちょっと過剰な気がします。
Posted by mino at 2009年11月21日 17:35
minoさん
そうですねえ、わたしもあのころの日本はB水準と思いますよ。都会育ちの人は、そんなことはないと反発するかも知れませんが、大部分を占めた田舎の人はそうだったと思います。あとで洗うものまで、常に衛生的に扱う必要は有りません。
常に衛生的に扱うにはそれなりのコストがかかる。そのコストを払える社会がAということだと思いますね。当時はそのコストを負担できなかったと思います。
日本の場合、海の幸は刺身にしたりしましたので、コストの負担に抵抗が少ないかも知れませんねえ。
中国では、生卵さえ食べることに抵抗があります。結局は生産者の衛生状態に信用がおけないのだと思います。
Posted by 謫仙 at 2009年11月21日 21:06
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