白 小嫦娥
この小嫦娥(しょうじょうが)との碁は一連の謫仙楼対局の第一局目である。
当時はHPの時代であったが、ブログ開設の時にとりあえず別な名で転載しておいた。
ようやく加筆訂正し、「謫仙楼対局」の第一局目とする。
漢字が読みにくく難しいという話もあったので、かなを入れてみた。ほとんどは誰でもそう読みそうだ。おそらくそう読んだが、それでいいのかと疑問に思ったのであろう。
なお、碁を知らない方のために
この手段の「漢語名」はわたしがつけたのであり、実際にそういう名前の手があるわけではない。多くは金庸小説から拝借したが、わたしの独創もある。言葉の流れを楽しんで頂けたら幸いである。
黒はたすき小目、白はたすき星で始まった。一隅は大桂馬のシマリを打った。これがこの碁のキーポイントとなる。
もうひと隅の小目の黒に、白は「氷河倒瀉(ひょうがとうしゃ)」でかかってきた。わたしは「朝天一柱香(ちょうてんいっちゅうこう)」で受けたが白は「千里流砂」に変じた。
そうなると「朝天一柱香」の位置がなんとなく重いので、「白砂青松」でかわそうとしたが、白は「及時驟雨(きゅうじしゅうう)」で追撃してくる。どうやら研究済みらしい。
ところが対隅の黒は、いつもは桂馬しまりなのに、この時だけは大桂馬であった。その一路の差によって、白が「及時驟雨」を打ったとき、「波濤千里(はとうせんり)」が成立する。それをみて、「大鵬展翅(たいほうてんし)」で辺に向かった。
その後「落花流水」などで10手ほど進んだところで、白は「久米仙望腿」を打った。それをきっかけに、黒は「波濤千里」を決行した。これで白を分断した。
「檎龍手(きんりゅうしゅ)」「鷹爪手(ようそうしゅ)」「沛然有雨(はいぜんようう)」などの応酬が続いたが、分断したのが大きく、「浚波微歩(りょうはびほ)」で後ろに回り「開天闢地(かいてんびゃくち)」で攻めると白の大石が怪しくなった。
ここで碁を決めようと「一陽指」で突いたのが打ちすぎだった。「一陽指」は南帝段氏(大理国皇帝)の絶技であり、低段者は失敗することが多い。
白は「老虎渡河」を返してきた。本来この手は無理筋で、咎めることは簡単だったが、なんとうっかり黒は身ダメを3つも詰めてしまったのだ。結果、よせ劫が本劫になって白が生き返ってしまった。ダメづめが劫立てになってはこの劫は勝てない。敗着である。「大鵲啄虫」を見て投了した。
局後、見ていた一同が指摘したのは、「一陽指」を打たず「風子泰然」あるいは「亜及入玄」ではっきり生きておけば、白は2眼できず、それで終わりだったということだ。そうは言っても打っているときは、その手は「青天雨傘」に思える。
なお、プロ棋士の講評は「謫仙游頂」又は「千寿洋行」を打てば、まだ可能性ありということだった。