2010年01月30日

夕陽の梨

夕陽の梨(せきようのなし) 五代英雄伝
仁木英之   学習研究社   08.5

 五代とは、唐が亡んだあと、小さな国が興っては消えた時代である。
 唐が完全に滅亡した907年が歴史区分だが、875〜884年の黄巣の乱で事実上滅んでいて、その後は小勢力の乱立となった。
 その黄巣軍は、880年ころ長安を落したが暴政を敷いた。そのため黄巣軍の幹部であった朱温が裏切って唐側につき長安は唐に戻る。
 朱温は唐から朱全忠の名を貰うことになる。唐朝廷を掌握した朱全忠は皇帝を傀儡とし、907年には遂に禅譲を受けて梁(後梁)を建国することになる。この後が五代十国といわれた時代だ。
        sekiyounonasi.jpg

 さて、この本には「五代英雄伝」という副題が付いているが時代は唐末期で、朱温の子供のころから、黄巣軍に身を投じて、長安(880年ころ)を落とすまで。
 朱温は奴隷のような身であったが、梁の皇帝となる。その若き日の苦悩と成長の物語だ。
 初めは塩の闇商人になるが、一団を任され、hou.jpg(ほうくん)の軍に参加しても、小さいながら一軍の長となり、自分の軍の中核をしっかりと育てる。後に黄巣軍に身を投じてもそれは同じである。そうして黄巣の右腕にもなり、参謀のいない黄巣をリードするようになる。
 朱温を助けようとする者が次々と現れる。また部下の信頼も厚い。そこにいたるまで、苦労を重ねたので、それが人格となったようだ。特に用心深い。
 将となるべき星の下に生まれたといえるが、もちろん本人の努力と人徳による。下にいる兵卒たちも、軍を離れては生きていけないのである。それならできるだけ生き残る可能性の高い将の下にいたい。こうして優れた将に人が集まる。

 そんな五代になる前の話だが、朱温は五代十国のさきがけとなる人物で、他にも五代の英雄伝を書くつもりなのかも知れない。それで五代英雄伝としたと思える。
posted by たくせん(謫仙) at 08:13| Comment(2) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
朱温=朱全忠とは知らずに読み終えてしまいました。
布袋様も出てきてびっくりです。
まだまだ続くのですかね〜。
Posted by 阿吉 at 2012年05月28日 17:11
阿吉さん
この本は続きは出ていなくて、改訂版が出ているンです。
http://takusen2.seesaa.net/article/145474537.html
朱温
こちらがこの本の三倍くらいの長さで、五代英雄伝というべき内容です。さらに
http://takusen2.seesaa.net/article/261584770.html
李嗣源 がその続きとも言うべきかな。
この時代は一代の英傑は出ていても、無教養で次代の育成ができず、王朝を維持できないという特徴がありますね。
おすすめです。
Posted by 謫仙 at 2012年05月29日 07:07
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