仁木英之 講談社 09.10
漢の武帝が没して千年の後、唐の末期文宗の時代。南平郡王高崇文の孫に高千里という者がいた。一本の矢で二羽の鳥を射落としたという弓の名人である。この高千里の伝奇的な物語である。
この本は正月に史仙さんに紹介された本だ。

高千里は異形であった。
その昔、老君は無から有を生み出し、西王母は天地を創造し、秘宝五嶽真形図が万物をつなぎとめた。この五嶽真形図が天地の器と認めた人物が五嶽真形図の主となれる。主となればこの世界を自由に作り替えることができるという。だが、漢の武帝は認められず、没して千年の後に再び、五嶽真形図が主を求め、現人類と、現人類に滅ぼされた別な人類「共工」の一族との、五嶽真形図を巡る争いが始まる。
吐蕃のバソン・道士の趙帰真・少林寺の僧絶海・高千里の4人は偶然(ではないが)のように集まり、五嶽真形図を求めて旅をする。各人それぞれ特技の持ち主。
バソンは狩りの途中で、不思議な老人に人類なら言葉が通じるという薬を貰い、頼まれて五嶽真形図を求める旅に出る。バソンは趙帰真と絶海とでは話が通じるのに高千里とは通じない。
五嶽真形図は手に入らないが、「共工」の一族は退けることができた。
高橋留美子の犬夜叉のような、超常的な物語である。
全体的にはバソンの視点で語られることが多い。この巻の主人公はバソンかと間違えそう。
かなり硬い文体で書いている。僕僕先生のような軽い文体を考えていると手強いのに驚く。
あとがきによれば続きがあるという。高千里の物語は始まったばかりなのかな。