椎名誠といえば作家のはずだが、小説はほとんど読んだことがない。
そのことは前に書いた。
赤マントシリーズ トンカチからの伝言
赤マントシリーズはこれ以外にも多く読んだが、紹介しないのは「以下同じ」だからだ。
「ナマコのからえばり」は、毎日新聞社から出ているように、赤マントシリーズとは別なシリーズだった。しかし、内容は赤マントシリーズとほとんど変わらない。
相変わらず、鋭い観察眼で、それをおもしろく書く。読み始めると引きずり込まれる。それでいながら、読み終わってもほとんど記憶になく、「それがどうした」と思ってしまう。
「若者よ、テレビを見るな」という。見るなというほど悪い物とは思えないが、言ってる本人は、旅から旅の生活をしていて、テレビを見る時間などない人だ。見る時間がたっぷりある人が、見ずに言うのなら迫力があるのだがなあ。
この本を読んでいて思ったことは、「トンカチからの伝言」とほとんど同じ。
毎日のように旅をしていて、旅の合間に書いている原稿は、毎月20本以上という。やはり天才なんだ。なんでもよかったら素人にも書く人はいる。しかし、これだけ質の高い、つまり売れる話を書ける人は少ない。
それなのに肝腎の小説は読む気にならない作家だ。
追記
サーカスの話があった。日本のサーカスは哀愁が漂い、ソ連のサーカスは国家を背負い、中国のサーカス(雑技)は子供のときからの過酷な訓練が感じられる、とか。
わたしは雑技しか見たことはないが、子供のときから雑技以外のあらゆることが取りあげられ、それで雑技団に採用されなかったら生きていけないんじゃないかと思われ、心底楽しめなかった。今ではそんなことはないようだが、本音はどうなんだろう。宦官や纏足の延長を思ってしまうのだ。
それから選挙の話で、名前を連呼する選挙カーをからかっている。まともなことを少しは話せと。
それはそうなのだが、法律によって、選挙カーでは名前以外は話してはいけないことになっている。わたしが、こんなおかしな選挙法があることを知ったのはそれほど古い話ではない。
椎名さんなら、候補者をからかうのではなく、その選挙法をからかって欲しかった。もしかしたら、規制を知らなかったか。