聖姑 :白
少し前の話だが、ネット碁で十数連敗したことがある。負け続けると何をやっても勝てない。さらに連敗を重ねたため、三子置かせて打った相手と二週間後には互先で打つことになった。
この連敗のきっかけとなったのが、この対局だ。
黒がかなりいいと思っていた。黒1・白3を交換してから黒2に行く予定だった。だが黒1に手抜きをされて白2。打たれてみると、もう互角か。しかし黒番だ。
ところが黒3にも手を抜いて白4。白4は腰が伸びすきているようだが、聖姑は「とても足りないので、勝負手のつもりでこう打って、打ち込みを誘いそれを攻めようと思った。中央から右辺の白が死んだら投了するつもりだった」と言う。
中央で手を抜かれた以上、攻めに入る。黒1・白2・黒3・白4。ここで、白5が怪しいので、はっきり目を奪おうと黒5を打った。しかし白6となってみるともう白は活きているではないか。ここは黒6で目を奪いに行かなければならない。初歩の詰め碁だ。
こんな単純な手が読めなかったとは恥ずかしい限り。ここに至っては次善の手として黒A・白Bを決めて、左上の白地を値引かねばならない。その黒Aを怠ったばかりに右下を荒らされてしまった。
次の図である。右下だけで20目以上損したか。
黒は踏み込んだのが遮られて、かなり無理をしたと思うが通ってしまった。中央の黒と左辺の白が死ぬ振り替わり。だがその間に右下を荒らされてしまった。それでも差し引き黒が得したのではないか。
ここでは黒は15目くらいリードしていると思っていた。
上辺に移り黒1とはねた。かなり危ない手だった。ここは勝っているのだから、黒Aなどと損でもはっきり決めてしまうのがよかっただろう。
黒1のとき白2、予想外の手を打たれて動揺ししていたのだろう。次の白4キリの対策が見つからない。仕方なく黒3・白4から黒Bと3目を捨てることにして黒3と打つ。
ところが黒3の位置のダメが詰まると白4に対して、黒A・白B・黒C・白D・黒Eで何ともないではないか。それが黒3を打つ前に考えていると、黒A以下に気がつかなかったのだ。
結局、黒3・白4のあと、ここで考えずに予定通り黒B・白Aと三目を捨ててしまった。
もう逆転しているらしい。結局最後まで打って数えてみると黒は1目半足りない。
「謫仙さんて、知らんふりして打っていると、勝手につまづいて転ぶンだから楽しい」
この前もそんなことを言われたなあ。
「勝負手は失敗したのに、投げ場を求めると転んでくれるとはねえ」
この対局、黒がこう打てば勝っていたという場面が何度かあった。それをすべてのがしたが、それでも勝っているつもりでいた。数えてみたら足りなかった。
負け続けると、手が縮んで腰が伸びすぎる。
最初の一隅の定石を相手が間違え、それに対して強く打ったつもりが、もっとひどい間違いで、そっくり取られたとか。
取ったつもりでいた石がセキになったとか、さらに、取ったつもりでいたので自分の目がなくて、セキくずれで逆に取られたとか。
シチョウあたりを打たれて気がつかなかったとか。
手があるのに読めなかったとか。
取ったと思ったら、それを上回る相手の壁ができていたとか。
何もしなくとも勝っているのに、さらに踏み込んで大きく飲み込まれたとか。
寅さんのように「恥ずかしきことの数々」で、すべて書いてたら、もうひと様の前へ顔を出せないほど。
もっとも勝ち始めると、何をやっても勝てる。これを書くと「恥ずかしきことの数々」の裏返しになってしまう。