フランス少年との碁を打ち終えてから、週間碁を広げる。
7月14日に行われた、天地明察の著者冲方丁さんのインタビューが載っているのだ。
出席者は現役最高年齢の杉内雅夫九段(大正九年生まれ)・依田紀基九段・小林千寿五段。それに司会として秋山春秋子。
内容は当然ダイジェストであろう。実際にはもう少し濃い話があったのではないかと思われる。
著者がこの本を書いた動機のような話が続く。
わたしは算知道悦六十番碁(小説では二十番碁)の話に興味を持った。二十番碁を算知が持ちかけたのは囲碁界の常識にないので、どこから…という問に、春海の天文の資料の中に有ったと言う。
これが本当なら囲碁史上に於ける大発見なんだが、続きがない。若いころ囲碁の神様と言われた杉内雅夫九段も知らない話。その資料は何か。どのように書かれていたのか。その信憑性はどうか。などなど細かい話があったと思えるのだが…。碁方と碁所の区別もできない著者なので、誤読していないか気になるところ。
ただし、本物の資料にそう書かれていた可能性はある。一門の資料なら一応体裁を繕えるだろう。「師は本因坊の挑戦から逃げ回っていて、六十番碁を二十番しか打たなかった」とは書けないからだ。はじめから二十番碁であったかのように書くだろう。師から本因坊へ持ちかけたかのように書くだろう。
客観的な資料になりうるかどうかが問われる。それでいままで知る人がいても無視されていたのかもしれない。
千寿師父に訪ねたかったが、ぐっとこらえて口には出さない。千寿師父は7月30日に日本棋院の海外室と出版部を担当の常務理事に就任している。内容を勝手に漏らすわけにはいかない立場なのだ。
碁ワールドではもう少し細かく出ると思うが、読む機会があるかどうか。
天地明察に対して、わたしはかなり手厳しいことを書いているが、基本は褒めている。間違いを正して、安心して推薦できる本にして欲しいのだ。
専門家の監修を入れて漫画化できれば、ヒカルの碁につぐ面白い囲碁マンガになるだろう。本因坊という名も世界に知れ渡ったところだし、世界が待ち望んでいると思う。
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