夢枕獏 徳間書店 2009.9
この本は1991年の「龍の紋章」と「龍の咆哮」を合本したものである。
闇狩り師九十九乱蔵シリーズはこの前に短編集がある。そしてこの長編だが、この後新刊はなさそう。
今回は前編「龍の紋章」と後編「龍の咆哮」をまとめて一冊にした。そのため五百頁にもなる。
闇狩り師、不思議な職業の九十九乱蔵(つくもらんぞう)が、不可解な現象を読み解き、解決する物語。
本書では犬の精に体をのっとられ、口から犬を吐き出す、怪奇な振る舞いをする男。それを取り巻く連中。九十九乱蔵はその原因をつきとめるのだが、取り巻く連中や巻き込まれた被害者たちの視線が中心で、主人公はその被害者たちでもある。九十九乱蔵の登場場面は少ない。
十五年前あるダム工事があった。それで人柱にされた子供の家族が、ダム工事で大もうけをした久我沼羊太郎を呪うのだが、そのやり方がこの呪術社会のやり方。それは九十九乱蔵のような呪術社会の人物でないと解決できない。
その不思議な技の数々と、それを解く技の数々。九十九乱蔵の独特な精神世界の集大成のような物語。