2010年12月10日

異譚・千早振る

鯨統一郎   実業之日本社   07.11
        chihayaburu.jpg
 落語に長屋ものといわれる噺がある。登場人物は、八ッつぁん・熊さん・ご隠居・与太郎・大家さん、若旦那といったところ。
 本書で取り上げたのは、粗忽長屋・千早振る・湯屋番・長屋の花見・まんじゅう怖い・道具屋・目黒のさんま・時そば。
 この本はそれらの噺を鯨統一郎風に料理して、一連の小説にしたもの。

 最後のページに主要参考文献があって、「落語百選 春」「落語百選 夏」「落語百選 秋」「落語百選 冬」の四冊。
 その前書きに
*本書の内容を予見させる可能性がありますので、本文読了後にご確認下さい。
 これが一番笑ってしまった。
 落語ファンならば、これらの噺は何度も聞いたことがあるはず。もちろんわたしも何度も聞いている。もう二十年以上聞いていないが、それでも噺は隅から隅まで知っている(憶えているというわけではない)。だからその章の最初の一行を読むと、あるいは肝腎の一行を読むとオチが判ってしまう。
 それでも読むのは、そこまでに持っていく間に、鯨統一郎らしい演出があることを期待しているからだ。
 同じ噺でも演者によって面白さが変わる。だから鯨屋十一楼師匠の落語を聞くような感じで読んだ。
 例えば高杉晋作を暗殺しようとする一団がいる。お殿様には直接相談できる身分ではない。その一団は目黒に隠れ家がある。だから「目黒の秋刀魚を使え」。と言われれば決行である。
 殿には話は全く通じていないのだが、通じていると思ってこう言う。
「この屋敷の裏に、高い杉がございます。その杉が、ちと邪魔になっています」
 ……
 料理は何がよいかと聞かれて、
「では秋刀魚を所望する」
「目黒の秋刀魚」を一度でも聞いたことのある人なら、この先どうなるかは判ってしまう。

 こんな風にして鯨統一郎らしい噺が展開していく。
posted by たくせん(謫仙) at 07:16| Comment(2) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
落語を題材にするとは面白いアイディアです。いくらでもありそうなのに案外ありません。
私もよくラジオの落語を聞いていました。だからここに乗っている話は全部分かります。最後の目黒の秋刀魚も分かります。高杉晋作さんかわいそうに。(笑)
この本を手にする人なら、みなこれらの落語を聞いたことがありそうなものです。
>*本書の内容を予見させる可能性がありますので
私も笑ってしまいました。
Posted by mino at 2010年12月11日 20:56
minoさん
落語を題材にした本は、探せばあるのでしょうが、目にしませんね。おそらく大量の出版物に囲まれて気が付かないのでしょう。
こんな暗殺団で高杉晋作を消せたのかどうか…、まったく気になりませんでした(^_^)。
この本を読もうとする人は、落語を聞いたことのある人と思いますが、落語は知らないが、鯨統一郎ファンがいるかも知れませんね。これで落語ファンが増えることを願っています(^_^)。
Posted by たくせん(謫仙) at 2010年12月12日 07:54
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