2011年03月19日

時間切れ負け制の終局問題 

11年3月19日追記

11年1月4日 記
 わたしは時間切れ負け制の終局ついて、二つの疑問があった。時間が切迫しているとき。
1、時計を止めるのはいつか。
 相手が終局に同意しないときはどうするか。
2、大石を取りあげなればならないときどうするか。
 ローカルな大会では、いつも「石を取りあげてから時計を押してください」と注意されていたのだ。大石を取りあげているうちの時間切れ、を心配してしまう。

 先のアジア大会で、時間切れを狙う組があった。
アジア大会で時間切れを狙うプロ棋士がいた 参照
 審判の裁定で反則負けになったが、その裁定の根拠は「成文化したルール」であったという。棋士も納得した(本当かな)そうだが、どのような文だったのか知りたい。
 この問題は、時間切れ負け制では必然ではないかと思えるのだ。わたしは「幽玄の間」でその棋譜を見ることができたが、肝腎の部分はなかった。
  
go10.12.27.jpg 
 白▲に黒は手抜きして上辺に移り、ここで終わっている。この部分なら問題ないはずだが…と思っていたら、問題はこの後に生じていた。この後に自分の地中に無意味な手を十数手打ったという。
 まさかと思っていた「1、時計を止めるのはいつか」問題が、プロの手合いで現実に生じたのだ。
「2、大石を取りあげなればならないときどうするか。」については、かささぎ師兄が、「石を取りあげる時は、時計を止めてよい」と言っていた。

   …………………………

「囲碁の新常識」という本がある。
石田芳夫   河出書房   06.7
 この本の存在はかなり前から知っていた。それでいながらなかなか読む機会がなかった。発行してからすでに5年以上たつ。先日、日本棋院に行ったときこの本を見つけた。1500円。
 変化の著しい定石・布石とルールの追加事項を取り上げている。新常識というが、わたしはもともと旧常識なるものを知らないので、定石・布石の新しい常識と言われても猫に小判。
 マナーと対局の仕方の話なども詳しく書かれている。囲碁規約に関しては全14条をあげ、重点を解説している。ルールの追加には、読んでおかなければならない大事なことがあった。
 ここで取り上げたい文は、平成15年1月改訂の次の条文だ。

 日本棋院対局管理規定第28条
(1)石を盤上に打ち、手が離れた時点で着手の完了とする。
(2)着手によって取り上げなければならない石を生じた場合はすみやかに取り上げることとし、取り上げなければならない石を全部取りあげたとき、着手の完了とする。ただし、当該着手に関する秒読みは、打った石から手が離れた点で終了する。


「着手」と「着手の終了」を区別していることは知っていたが、時計は着手の時点で止めるのだった。つまり時計を止めてから石を取りあげてよい。そして取り終わった時点を着手の終了として、再び時計を動かす。
 なお、第28条(3)には、取り残しても反則とはならないという条文がある。
 この規定により、「2」問題は解決した。しかし、対局の停止に同意せずに無意味と思われる手を連発する問題は、解決していない。
 だからアジア大会の「成文化されたルール」の内容を知りたいのだ。

 わたしのまわりの人は、時間切れを狙われることを心配して時間を残しておく、という人が多い。逆に、時間切れ狙いはめったにないので、その時は「一生に何度もあることではないので、運が悪かったと思って、終わりにする」という人もいる。

 わたしはダメを詰め終えるまでが対局と言われればそのように打つし(注1)、同意するまでといわれればそのように打つ(かな?)。
 普通は同意するまでで、同意した時に時計を止めて、ダメをつめて終局とする。
「同意するまで」の場合、ダメがなくなっても同意せず、時間切れ狙いで地中に打つ相手には、最短でも360手(注2)近くは覚悟しなければならない。そのような相手には意地で対抗してしまいそう。

注1:ダメの空いているときには対局の停止を求めない、時計も止めない。ダメがなくなった時点ではじめて「パス」を告げ、同意を求める。パスも一手になり、相手は手があると思えば、続けて打ってよい。これは「対局の停止」がなく終局になる。
注2:相手が自分の地中に打てばこちらはパス。相手がこちらの地中に打てば適宜対応する。普通なら五百手以内で終わるのではないか。
 黒なら183目(活きるために地が2目ある、計185)が自分の石になれば勝ちが確定。181+4目=185でコミが出る。こうなったら相手がどんな手を打とうがパスで通す。パスなら1分に100手は打てそうだ。うっかり抜いてしまうと、抜きあとに打たれて手数が伸びてしまう。現実にそうなると一目で優劣は判るだろうから、迷うことはない。

 わたしは「切れ負け制」と「同意するまで」の2条件を聞いたときに、すぐにこのように考えてしまうのだ。こんなに細かくはないにしても。
 言うまでもなく、秒読み制にすればこの問題はなくなる。

参考:2009ファンフェスタin箱根(下)


…………………………

 11年3月19日追記

  「メイエン事件簿」でこの問題に対して、答えらしきものが書かれている。詳しくは アジア大会特集(2)反則は事件か を参照
 それによれば、成文化したルールとは、「相手の時間の消費だけを狙った無意味な着手が続いたとき、審判がそれを判定負けにすることが出来る」であった。
 そして韓国選手はその判定を受け入れたという。

 ところがわたしには新たな問題が発生した。なんと、このルールが選手たちに伝えられていなかった、という。「選手に伝えられていなかったルール」を適用してよいのか。
 もうひとつは、何をもって「無意味な手が続いた」と判断したのかということだ。今回は選手が判定を受け入れたので、おそらくプロならば、そう判断できる状態であったのであろう。
 このルールを中国の選手だけは知っていた(抗議した)わけだが、それは中国の国内ルールにあったのでそう思っただけで、中国選手だけに知らされていたわけではない(らしい)。
 この問題、自分はやらなくても相手にやられることを考慮しなければならない。ルールを知っていれば、そのことに気を配らなくてもいい。
 薬物問題なども、メイエンさんにとっては味の悪いところがあったようだ。時計も使いにくく、問題が起こっていた。
 今回の碁では、始まってからルールをいじったりしたようだ。 
 とにかく初めての競技会なので、いろいろと不手際があった。やってみて、問題があればそこで制度を変えればいいというやり方だ。お国柄かな。
posted by たくせん(謫仙) at 08:08| Comment(2) | TrackBack(0) | 囲碁雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
 この問題、ずっと気になっておられていたようなので、一応の解決というかルールが確定したみたいで良かったです。とはいえ、なんだかフワフワしたルールのようですが、やっぱお国柄なのでしょうかねぇ。。。 
 ときに謫仙さん、今日は20年ぶりのスーパームーンらしいですよ。夜空にうまく見れるといいんですけれど。
Posted by 樽井 at 2011年03月19日 20:17
樽井さん
ルールとしてはフワフワしていますが、今回は、強い人ならはっきり判るので、問題なかったようです。おそらくわたしでも判ったでしょう。
状況によっては、なんともいえない味の悪いこともあります。打っている本人しか気づかないいい手があったとか、素直に生きずわざわざ劫にするかとか。しかし、ルール化するとこうしか言いようがないンでしょう。
日本でもこれに近いことが過去にありました。二人の仲がいいとはいえないライバル同士がいました。ABとします。Aが対局のとき、そのような状況になったのですね。
それを見ていたBが「あのときだけは何が何でもAさんが勝ってほしいと思った」
日本では悪名が響いて、生きにくくなるでしょう。
全く新しいルールでは、常識にないことが起こります。

月。そのつもりで見たせいか、輝いて見えました(^。^))。
Posted by たくせん(謫仙) at 2011年03月20日 07:28
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック