2011年02月13日

御宿かわせみ 

御宿かわせみ傑作選「初春の客」
平岩弓枝   文藝春秋   平成16年

 食わず嫌いという言葉がある。わたしは嫌いというわけではないが、いわゆる純文学という本には興味がない。そのため、芥川賞とか直木賞作品というのは、おそらく読んだことがない。もっとも読んだ作家が何度か直木賞の候補になったことがある、というような話はある。
 この本がそのような内容なのかは知らないが、今まで何百回も本棚の前を通りながら、食指が動かなかった。なにしろ、この本を読むまで、「御宿かわせみ」は伊豆あたりの現代の旅館だと思っていたのだ。
 ところが、最近読みたい本が無くなってしまった。そこでこの本を借り出したのだ。
 別なある有名な作家の本も初めて借り出した。それは途中で挫折した。古代の人物が現代人の如き心の動きをするので、違和感が大きすぎたのだ。もちろん内容が面白くなかったことは言うまでもない。その原因が違和感が大きかったことにもある。 この本は江戸の時代劇であった。江戸時代の心で生活している人々の、人生の機微に触れる話だ。夢中で読んでしまった。こんなに面白いのなら、もっと早く読んでおけばよかった。
 この登場人物の江戸時代の心は、実際とは異なるかも知れない。だが、わたしには江戸時代の人の心として違和感がなかった。
 江戸の与力と同心。わたしにはほとんど区別がつかないこの階級が、結婚することさえ難しいほどの差があるとは思ってもみなかった。
 主人公は与力の弟の神林東吾。その恋人の、元同心の娘るいが経営している大川端の宿屋「かわせみ」。江戸の町におこるさまざまな事件を、「かわせみ」を通して横からの目線で見ながら、時には上からの視線も利用して解決していく連作短編集。
 厳しいながらもほっとするような解決が多い。それが「るい」の切ない忍ぶ恋と重なる。
 この当時、すでに30巻を数えた。その初期10巻から選んだ9編。
posted by たくせん(謫仙) at 10:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
 読んだのは前回の書き込みで知っておりましたが、こんなに気に入られたのであれば、きっかけになれて良かったです^^
このシリーズはあの短さと、余韻がいいです。
 すっと江戸自体に身体が移動するような肌感覚も素敵な本で、旅のおともにも最適です。
Posted by 樽井 at 2011年02月13日 23:34
樽井さん
短さ。短編の持つ一つの話題を凝縮する話は読んでいて清々しく感じます。ただし短編は思い入れが無くなりますね。それがこの本のように連作短編となると、長編のような思い入れが沸いてきます。
努力がなかなか報われませんが、粋な結果が主人公たちを納得させている、続けさせている力かと思います。
江戸時代は不条理な面もありますが、全体的には幸せな時代ではなかったかと、感じさせられました。
Posted by たくせん(謫仙) at 2011年02月14日 15:52
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