2011年04月06日

盤上盤外の記

江崎誠致の碁の本 T

江崎誠致   筑摩書房   1982.9
 江崎誠致(1922−2001)といえば小説よりも碁で知られた作家だ。フィリピンでの戦争体験を題材にした『ルソンの谷間』で直木賞受賞。
 実はわたしはこれを読んでいない。読んだのは碁に関する本ばかり。
 著者の生き方に共感することが多く、もちろん囲碁小説やエッセイなども好きなので、多くの本を読んだ。この本は新書版大で242頁1100円。

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   囲碁奇人録
   囲碁奇人伝
   文壇囲碁名人戦記
 の三部構成となっている。
 奇人とは変人とか変わり者だが、その枠を越えた何ものかを持っていて、それを自然に体現している人こそ奇人であろう。
 囲碁奇人録では著者の知っている、あまりに非現実的な碁好きの生き方の話だ。
 碁を打つために製本所を経営している人。
 プロの打ち碁を並べるばかりで、絶対に対局をしない人。
 戦場では無類の臆病者が、碁盤を前にすると、間もなく襲撃があるというのに別人のように落ち着いてしまう人。
 「四目じゃ碁にならんよ三目で勝負だ」と言うが、それは井目につけた風鈴の数という、超弱の碁好き。
 二年もでたらめ碁遊びをしていて、それは碁ではないと気付かなかった人。
 賭け碁で一財産をなくした人。
  など。
 
 囲碁奇人伝は、その人の生き方より碁の話が中心になっている。詩人の野上彰とか榊山潤などの碁への異常な愛情ぶりなどである。
 例えば「手談」について。むかし寛蓮というという碁の強い法師がいた。碁聖といわれていた。この寛蓮が女性に手もなくひねられ惨敗した話が伝わっている。しかし、著者はそれなら序盤の数手で違和感を感じ、布石が終わるころには、相手の力量が判るはず。それが判らない寛蓮は「手談」を知らないと喝破。
 共感できる話がある。文人碁会の幹事になったときの話、碁会の賞品の寄附をあちこちに頼むのだが、それは他の人がやるとはいえ、そういう立場にいることが耐えがたい。という。

 文壇囲碁名人戦記は、われらのちかちゃん(濱野彰親)も登場する。ハンディ戦なので棋力のない人でもチャンスがある。もっとも優勝するにはそれなりの力が必要。ちかちゃんは2回優勝しているが、その話はない。
 第三期、年が入っていないが1975年ころ。
 今回は所用のため不参加だった富島健夫は、濱野彰親とともに小林千寿三段に指導を受けているが
 第五期、優勝した富島健夫について、
 このところ彼は濱野彰親とともに、小林千寿四段の稽古を受けていて、心境著しいというから
 終わって祝杯をあげるとき、かけつけた小林千寿四段が細い目を更に細めて、いかにもうれしそうだった。
 第七期、本命の濱野彰親は、
 一回戦で私にあたったのは彼の災難であった。…中略…
 もし、濱野彰親が小林千寿四段に四子か五子で稽古を受け、ときには勝たせてもらうことがあるからといって、私に五子も置いて負けるわけがないと考えたらそれは間違いである。打っていて、濱野にはそんな気が感じられた。
 などと、十三期まで棋戦の様子を書いている。
posted by たくせん(謫仙) at 08:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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