金庸のただ一冊の中短編集である。
この本を手に入れて、発行されている金曜作品は全て手に入った。公式的にはこれで金庸小説の全て。
その他の作品もあることはあるのだが、翻訳されていないし、内容も古い本の現代語訳などである。最後なので全作品の頭文字を集めたいつもの対連を再掲する。越女剣の越がない。
飛雪連天射白鹿
咲書神侠倚碧鴛
飛狐外伝・雪山飛狐・連城訣・天龍八部・射G英雄伝・白馬嘯西風・鹿鼎記
秘曲笑傲江湖(笑は咲と同じ)・書剣恩仇録・神G侠侶・侠客行・倚天屠龍記・碧血剣・鴛鴦刀
白馬は西風にいななく(白馬嘯西風)(中編)
西域の砂漠地帯、迷宮の地図を巡って争い、逃げる漢族の夫婦と幼い少女。追う一団の男たち。夫婦は死に、白馬上の少女一人が生き延びる。カザフの部落で漢族の老人に助けられ、カザフの少年と仲良くなる。しかし、半ば誤解から身を引くことになる。長じて武芸を身につける。
両親と死に別れてから12年後。親の仇と巡り会うことになる。あのカザフの少年は愛する人がいて、世話をしてくれた老人は亡くなり、武術を教えてくれた師も亡くなり、親の仇は迷宮をさまよい、結局たった一人で、失意のうちに老いた白馬に乗り、中原を目指すことになる。中編にしてはかなり複雑な、哀しいラブストーリー。
他の小説のように、次から次に山場がでてくるのは、元が新聞小説だから。
鴛鴦刀(中編)
他の小説にも出てくる鴛鴦刀。例えば書剣恩仇録の駱冰は鴛鴦刀といわれる。直接の関係はないようだ。
その書剣恩仇録と同じ頃の物語。鴛鴦刀と言われる長短の二刀があった。鴛鴦刀を手にすれば天下無敵という。その鴛鴦刀を西安から北京まで届けようとする鏢師。次から次に江湖の格言が出てきて、鏢師はその格言にそって行動しようとする。
鴛鴦刀を奪おうとする間抜けな賊。喧嘩ばかりしている不思議な夫婦。美少女と好青年。宮廷から使わされた手練れ。これらが晋陽の大侠客蕭半和の誕生祝いに集まる。
意外な結末はいつものこと。
他の長編小説に出てくる場面とよく似た場面があちこちにある。中身は濃い。
鴛鴦刀の秘密は肩すかしを食らう。
なお、西安から北京へ行くのに晋陽を通るとはどんなルートなんだろう。
越女剣(短編)
他の小説に女性の剣法として度々登城する越女剣。例えば射G英雄伝の韓小瑩は江南七怪の第七番で越女剣といわれる。それはこの越女剣が後世まで伝わったという。
呉越春秋の越軍は、兵の剣技でも呉より劣っていた。范蠡(はんれい)は羊飼いの娘が、優れた剣技の持ち主であることを知り、越軍の剣術指南役として迎え、兵を鍛えて宿敵の呉を滅ぼすまで。