2024-07-08 追記
グイン・サーガ・ワールド 1
栗本薫ほか 早川書房 2011.5
2009年に亡くなった栗本薫の代表作、グインサーガは未完のままになってしまったが、そのグインワールドを書き継ごうという人たちの、その外伝集の第一巻だ。
表紙の絵を久しぶりに加藤直之が描いている。初期辺境編は加藤直之だった。懐かしい。
グインの豹頭が、なんとなく人らしい表情なのだ。呪縛が解けると人頭に戻る感じがする。他の人の豹頭は豹の頭をくっつけた感じで、(豹頭の)人らしい感じが弱い。
ドールの花嫁 栗本薫
遺稿発掘とある。若き日に途中まで書いて止めてしまった。若き日のナリス。
その当時書いていた本編とはずれが生じたらしい。わたしには判らない微妙な差だ。
文体が少し古く、初期のグインサーガを彷彿させる。
星降る草原 第1回 久美沙織
草原の鷹スカールの、出生の秘話である。その母の数奇な運命を語る。
小説道場で著者の名を知ったが、投稿は記憶にない。異常な愛を語ることができる。わたしには苦手な話だ。
リアード武侠傳奇・伝 第1回 牧野 修
今日は特別な日だ。
出だしの第1行がこれだった。これだけで栗本薫ではない、と思ってしまう。
栗本薫なら、「今日は特別な日であった。」であろう。たったこれだけで、違和感が生じる。
講釈師のような立場の語り手は、講談調でリアード武侠を語るが、いきなり現代口語が挟まってしまう。わざと入れたと思いたいが、読んでいて、いきなり調子が崩れてしまうのだ。その前に、講談調の文も調子が悪い。そのためいまひとつのめり込めない。そしてミステリー事件が起こるが、このミステリーは成立するのか。違和感が消えない。
宿命の宝冠 第1回 宵野ゆめ
三話の中でこの小説が一番栗本薫に近い。栗本薫を詐称したら気がつかないであろうと思うほど。できは判断できないが、わたしの好みに合う。
沿海州の男装の姫が中原を巡ってから、故国の危機を知り帰ってくる。しかし、素直には帰れない事情がある。語り手はパロからきた世間知らずの青年。
これだけは続けて読みたいと思う。
日記より
夫君今岡清さんが発表した、栗本薫の日記の一部だ。
最初は中学一年。それから作家としてデビューするころまで。異様な精神状態を感じさせる不思議な文章である。
エッセイ
そして今岡清さんが栗本薫を語る。
文を書くことにとりつかれ、死の瞬間まで書き続けた、栗本薫のすさまじいと思える精神状態。これでよくあの大人の物語を書けたと思う。特に死の床に伏してからの、精神も病んでいたのではないかと思えるほどの異常な行動や言語。それを暖かく包む今岡清さんの感性。これで栗本薫は大人なのかと思えるほどだが、妙に納得できる話だ。
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2024-7-8 追記
本編も語り継がれていた。130巻以後148巻まで出ている。
著者は「五代ゆう」と「宵野ゆめ」の二人。宵野ゆめさんは体調が悪くなり、最近は五代ゆうさん一人で書いている。
これだけ長いと、あちこちにある伏線が、正しく回収できているのか心配になる。(というような意味の著者のぼやきがあるほど)
宵野ゆめさんは文体も栗本さんに似ている。五代ゆうさんは描写力がある。ありすぎる。そこが栗本さんに似ている。
↑ 気がついたと思うがこの文、わざとおかしく書いた。本文中に、このようなアレッと思わせるところが何カ所かある。
久し振りに続きを読んだので、全体を整理してみた。
宵野先生がきいたらむちゃくちゃ喜びそうですね。
メールで伝えておきますです。
先日第二話も脱稿したとのことでしたが、僕も楽しみにしております。
設定といい、物語の進め方といい、語調といい、わたしの好みにぴったりでした(^。^))。
グインの世界が判っている、という気がしました。先が楽しみです。
宵野ゆめというペンネームは問題。栗本薫は、ペンネームくらい魅力的な名を考えられないのか、といっていました。当時とは名前のセンスが変わっているので、言いにくいのですが、わたしはこのネームに不満なんです。(^。^))。
不満ですが、ダメと言うほどではない。
わたしのセンスがずれているんでしょう。