2011年09月03日

千里眼の死角

松岡圭祐   小学館   2003.11
 この本は、前に読んだことがある。しかし紹介を書いていない。そのためまだ読んでいないのかと思い読んでみた。
 この小説にも決定的な大きな欠点がある。しかし、小説は面白くて夢中で読んでしまった。
 シリーズの欠点については 千里眼 The Start で触れた。

 世界各地で人体発火現象が起きた。英国王室のシンシア妃はバッキンガム宮殿に引きこもり、大音量の部屋にいた。嵯峨が行くと、その部屋にいるか、時速63マイル以上で移動していないと発火すると思っている。
 原因はアメリカのスターウォーズ計画。世界中の上空に58基の静止衛星を張り巡らして、そこから人々の真上から個人めがけてマイクロ波を発射する。そして電子レンジのように発熱させる。それを制御するコンピューターは自分で考えることができ、しかもメフィスト・コンサルティングにのっとられてしまっていた。
 例えば個人を識別する方法など、正しいかどうかは別にして、その科学的知識に脱帽する。本当にそんなことができるのかと思ってしまう。そのシステムの欠点からシンシア妃の常軌を逸した行動が生まれたのだ。
 メフィスト・コンサルティングの有力者ダビデが内部の勢力争いに敗れ、メフィスト・コンサルティングから逃げ回ることになる。
 すべての武器を使用しようとすると、マイクロ波の攻撃を受けることになり、世界中の武器が使えなくなり、軍隊は壊滅することになる。
 それを嵯峨と美由紀とダビデが協力して、メフィスト・コンサルティングのトップを追い詰める。そして、世界が秩序を回復する。
 簡単に言うとこういうことになるが、その緻密さは、よくぞそこまで考えたと感心してしまう。

 ところが、そこまではいいのだが、おそらく、常識的な科学知識の持ち主ならある疑問を抱くであろう。ロンドンや東京の上空に静止衛星は置くことはできない。静止衛星を世界中の上空に貼り付けて上空から個人を攻撃することはできないのだ。
 静止衛星とは地球の自転と同じ速さで回っていて、見かけ上一点にいるように見えるだけに過ぎない。だから、赤道上三万五千キロにしかいることはできない。この小説の大原則大根幹とも言える部分が素人目にも間違っていることが判る。その衛星から個人を特定する。
 マイクロ波をビームにして、静止衛星から個人を狙うほど、人の手首を狙うほど焦点を絞れるのか。空気中で拡散しないか。建物の壁などで遮れないか。
 そんなわけでバカバカしくなり、紹介しなかったのであるが、しかし、それに目をつぶれば実に面白い小説なのだ。それで取り上げる気になった。
posted by たくせん(謫仙) at 07:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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