2011年09月14日

鮮魚師(なまし)

永井義男   読売新聞社   1997.10
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 表題作をはじめとする短編三話
 江戸末期の、きれいな話ばかりではない、それでも命がけで懸命に生きた庶民の裏表に光を当て、生活ぶりを紹介する。ページ数が少ないせいもあるが、一気に読んでしまった。

 鮮魚師
 江戸の町の台所を潤す、銚子から江戸への、鮮魚の輸送ルートを巡る事件を、千葉周作が解決する。鮮魚を運ぶにも新しいルートが開発され、古いルートに頼っていると、失業の憂き目に遭う。現代にも通じる技術革新の話と、懸命に生きた江戸庶民の話。

 天保糞尿伝
 江戸の町は糞尿が肥料として売買されていた。世界でも希有のシステムを利用して、寿阿弥が水野忠邦の改革を失敗させる話。
 あとがきにも書いてあるが、江戸の社会を理想的なリサイクル社会と賛美する声が大きいが、当時はリサイクルとして考えていた訳ではなく、しかもそのマイナス面も大きかった。情緒的な江戸礼賛は危険という。

 蛍狩殺人事件
 常磐津の師匠文字春が蛍狩りの夜に殺される。勝小吉がその謎を解く。勝小吉とは勝海舟の父だ。
 当時の庶民は、表は粋でも裏ではそれなりの生活をしている。決して誰もが楽に暮らしていたわけではない。特に女は生きにくかったであろう。
   藝が身を助ける不幸せ  という言葉を思い出す。
posted by たくせん(謫仙) at 07:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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