2012年01月17日

ルポ貧困大国アメリカ

貧困大国アメリカ
堤 未果   岩波書店(岩波新書)   2008.1

 このルポはリーマンショックの前に書かれている。すでにサブプライムローンの問題が発生していて、世界を震撼させていた。
 この本の題名はかなり前から知っていた。ようやく読む機会を得た。

貧困層は最貧困層へ、中流の人々も尋常ならざるペースで貧困層へと転落していく。急激に進む社会の二極化の足元でなにが起きているのか。追いやられる人々の肉声を通して、その現状を報告する。弱者を食い物にし一部の富者が潤っていくという世界構造の中で、それでもあきらめず、この流れに抵抗しようとする人々の「新しい戦略」とはなにか。

 こう問いかける著者のアメリカルポである。
 日本では貧困ビジネスという言葉がある。七万円にも満たない年金では普通は生活できないが、それは別の話として、一人では生活できない高齢者を、条件の悪い建物に押し込め、年金を取り上げてしまう。粗末な食事と極悪の生活環境で生活費を抑え、この金額から利益を得てしまう。貧しいからこそ、そのような搾取の対象となる。
 これと同じ構造がアメリカにある。ただし、対象は現役世代や学生も含めスケールが大きい。

 目次
1 貧困が生み出す肥満国民
2 民営化による国内難民と自由化による経済難民
3 一度の病気で貧困層に転落する人々
4 出口をふさがれる若者たち
5 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」

 サブプライムローンがそうだった。家を持つだけの収入のない人に、家を買わせローンを組む。教育レベルの低い貧困層の人には、その罠が理解できない。数年たってローンが払えなくなり、全ての財産を失ってホームレスとなる。そしてローンは債権として転売されていて、買った人は回収不能となる。そうしてなんとか生活していた人まで生活できなくなる。
 例 ローン50万ドル、利子10〜15%、返済額月3100ドル。これでは利子だけで月3100ドルを超える。ある一家5人の総収入に近い。それでも売れるのは、不動産の値上がりを期待させるから。3年もたって返済額が増えたところで破産する。そこまで計画されている。
 そうして貧困層になると食事も満足に食べられなくなり、偏った安い食事で不健康な肥満体となる。しかも医療は高額で受けられなくなる。
 ジャンクフードしか食べられないこどもたちも不健康な肥満体となる。
 ちょっと検査しても数万円以上の、盲腸摘出の手術でも百万円以上の金がかかる。ちなみにニューヨークで一日入院で243万円。
 家族四人で年間9千ドルもの保険に入っていても、少しでも条件に外れると全く払って貰えない。生活ができなくなる。一家が底辺に落とされる。
 そう、病院も株式会社化して金儲けを追究するのだ。
 あるいは戦争ビジネス。小泉改革のように普通は国でやるものを民間業者に任す。普通は効率が良いのだが、命や人権にかかわるものは、代わりがないため、独占企業は大もうけをする。アメリカではなんと戦争まで民間業者に任せた。
 副大統領がトップを努めた会社の下請けの下請けの下請けの下請けが貧困層から兵をつのり、イラクに送り出す。そこでの給料は実質時給45セントとか1ドル70セントとかいう安い給料で危険な仕事をやらされる。もちろん死んでもそのまま。現地の会社の社員と同じで、戦死者とは扱われない。民間企業の雇用問題ですます。
 貧しい人に学費を貸す。就職できず返せない若者は兵になるように誘いが来る。自己破産してもこのローンは返さねばならない。役所でさえ知らない学生の個人情報が、そのようなところに流れていて、困ったころをみはからって電話で誘う。
 諜報活動まで民間に委託(予算の70%)。そのために拷問は外国に連れ出しておこなう。そうなると間違って拷問を受けても、外国なのでそのままになってしまう。
 そうして貧困化は進んでいく。

 下流志向 以来の衝撃を受けた本だった。
 最近続刊が出たという。
posted by たくせん(謫仙) at 07:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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