2012年03月18日

ルポ貧困大国アメリカU

2012年2月09日記
2012年3月18日追記

堤 未果   岩波書店   2010.1

     rupohinkontairiku2.jpg

 前に紹介した ルポ貧困大国アメリカ の続編である。
 オバマ大統領のチェンジに期待を寄せた人々の、落胆ぶりが克明に書かれている。これは10年後の日本の姿かも知れない。
 前回はサブプライムローン(住宅ローン)を中心に書かれていたが、今回は学生ローン問題と保険が詳しい。目次を見てみよう。

第1章 公教育が借金地獄に変わる
第2章 崩壊する社会保障が高齢者と若者を襲う
第3章 医療改革VS医産複合体
第4章 刑務所という名の巨大労働市場

 教育費ローンの問題は前にも書いたが、さらに教育費の高騰も加わる。
 奨学金制度が縮小し、学資ローンが急拡大する。例えば7%の利子、これだけでも高利だが、一度でも支払いを延滞すれば、利子がふくれあがる。卒業するころには、就職難で普通の人には時給3ドルなんていう就職口しかない。生活することさえ満足にできず、一生学資ローンが返せないほど。破産しようが学資ローンは免除されない。保護の制度がいつの間にかなくなっていた。しかも新たなローンは組めなくなる。
 親の世代は、奨学金で勉学し、高給の就職口が当然なので、若者たちの苦しみが理解できない。
 実はわたし(謫仙)も理解できない。それならどうして大学に行くのか。実体は高卒ではろくな就職口がない。大卒でも高給の就職口は少ないという。日本でも似たような話を聞く。
 ローン会社から多額の補助を受ける大学は、学生に危険なローンしか紹介しない。あとで条件のいいローンを知っても、借り換えができないようになっている。連邦の規制によって禁じられている。借り手を保護するための法律は少しづつ変えられて、今では全くなくなってしまった。罠にはまったようなもの。
 学校も利益を追求する民間会社だ。

 社会保障が民営化されるとどうなるか。今までは各会社がOBまで保障していたが、会社が倒産すればその保障は受けられなくなる。この話は日本の国債問題に似ている。ふくれあがった将来予定された債務は、払いきれないのが明確になっていた。それでも対策はとられなかったのだ。
例: 2007年のGMは労働者10万人で、OB37万人の年金を払っていた。資金が底をついたところで倒産したのはご承知の通り。

 医療については、前書の紹介で書いたので省略。貧しい庶民はまともに医療も受けられないという。予約しても何十日も先になる。もちろん金持ちは別。

 刑務所が民営化されている。
 刑務所内の生活にも金がかかるのだ。収入は時給40セント、10時間働いても4ドルにしかならない。これで部屋代を払い、病気になれば医療費を払い、その他の日用品を買えば、とても足りない。借りることになる。数年後に出所するころ返済不可能な金額になっている。
 就職口がないため、刑務所に戻るしかない。三度目は軽犯罪でも終身刑になる。
 刑務所内の仕事も、重労働に回されないために、きちんと仕事をせねばならない。そこに仕事を持ち込む会社は、ボロ儲けをすることができる。時給40セント(刑務所への支払いも含めて2ドル)でストライキする心配のない優秀な工員が大勢いる。全部で刑務所内には232万人もいる。成人100人に一人。巨大なビジネスだ。一般の会社では太刀打ちできない。

 ちなみに刑務所人口は2008年統計で、アメリカ230万、中国では150万人、ロシア89万人、日本7万。アメリカが突出している。なお、犯罪数と刑務所人口は比例するわけではない。

   …………………………
2012年3月18日追記

 今日の朝日新聞に、子供の金銭感覚が取り上げられていた。
 小中高校生六万八千人が対象。
 お金がなくなったら、「銀行に行けばある」とこれは小学生。これも問題だが、次の問題は深刻。
  年利2%で100円を1年間預けると、2円の利子が付く
 これを正しければ◯という問題だが、正しかったのは中学生37%、高校生46%。
 ◯×式の問題は判らなくても半数は正解になりそう。判らないと答えた人もいるのかな。それにしても、高校生でこんな簡単な利子の計算ができない。
 これでは本題のローン詐欺(あえて詐欺という)に引っかかってもおかしくない。
 >これは10年後の日本の姿かも知れない。
と書いたが、わたしの知らないところで、もう始まっているのかも知れない。
posted by たくせん(謫仙) at 07:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この話、日本でもそうだが、大学に行く能力の無い者まで大学に行き、収入の少ない者まで、高レベルの暮らしをしようとすることにも問題があろう。
それが無理なことに気がつかない程度の人だから、詐欺に引っかかるようなもの。半分は自業自得。
ただ、まだ社会経験のない十代の若者が、判断を間違うのを助言する制度が必要におもう。少なくとも公立学校が加害者になるのは納得できない。

この中に出てくる話に、夏休みに世界旅行をして、苦しいと訴えてる人がいる。わたしなら、「世界旅行をやめて、アルバイトをしなさい」と助言するだろう。この感覚の差があって、著者ほどには同情心は沸かない。
Posted by 謫仙 at 2012年03月12日 16:10
私も先日読みました。
書いてあることは確かに問題がありますが、大問題かと言うとそうでもなさそうです。
ローンが破綻してホームレスになった人はどのくらいか。一千万人なのか二千万人なのか。それともそれはわずかで、ほとんどはアパートに入ったのか。その辺がはっきりしません。アパートなら私と同じで普通の生活になったという程度。
学資ローンにしても、被害者は例外のような気がします。学生が何百万人いるのか分りませんが、百万人もの学生が、それで困って退学したのでしょうか。どうもそうではなさそうな気がします。
>「世界旅行をやめて、アルバイトをしなさい」
同感です。
今まで五千万の収入のあった人が五百万になり、二百万の人に向かって「困った。生活ができない。助けてくれ」と言っているような状況に思えます。
高校さえ満足に学べない世界の青年に、世界旅行しながら「学費が問題」と言っても、同感は得られない気がします。
ただ、もう「少数の例外」ではなさそうなので、問題が生じていることは分るのですが、日本の現状から見ると、それほど困ったことかと思いました。
Posted by mino at 2012年03月15日 21:07
minoさん
実はわたしもその具体的な数字がなくてもどかしい思いをしました。かなり多いらしいとは思います、問題になるほどとは思います。それでも日本や諸外国と比べてどうかとなると、疑問が湧きますね。
ただ例えば、諸外国では年収十万円という人が普通の国があります。その人たちが日本に来て、十万円で生活できるか。もちろん不可能ですよね。だから、単純に日本と比べて、考えるわけにはいかないと、わたしから見ると問題ではないようでも、アメリカでは問題なのかなと、そんなふうにも考えます。
こどもたちが、あのジャンクフードで不健康に太っている話にはゾッとしました。だから飢え死にした人が周辺に多くいる人から見ると恵まれているようでも、普通の日本人から見ると、問題だと思うわけですね。
ところでこの問題、アメリカが推し進めたグローバル化によって引き起こされたと思いませんか。皮肉なものです。
Posted by 謫仙 at 2012年03月16日 20:38
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック