中野美代子 訳 岩波書店 2005
西遊記を前に読んだのは何年前だろう。ストーリーや登場人怪神仏物などほとんど忘れてしまった。陳舜臣の西遊記とか、伴野朗の西遊記とかも読んだのもかなり前。
武侠小説を読むようになって、また西域などを旅行したりして、中国の武侠的な地理もある程度判るようになって、今読んだら、前に読んだときは判らなかったことも判ったりして面白いのではないかと思った。
この本は李卓吾本の全訳である。西遊記の著者は呉承恩などと言われているが、不確実で定説とも言いにくい。
小説はですます調の文なので、漢字が多くても堅く感じない。
中国の物語なのに、この世界は仏教の倶舎論の世界を展開していて、インドの地理概念と中国の地理概念が入り交じっている。
さても本書は、このうちの東勝神洲のお話です。
これは単なる間違いではなく、意図的にこうしたらしい。
須弥山と極楽 にもあるように、この世界は、中央に須弥山(しゅみせん)、東に勝身洲(しょうしんしゅう)、南に贍部(せんぶ)洲、西に牛貨(ごけ)洲、北に倶廬(くる)洲が有る。
勝神洲ではなく勝身洲である。
そして南の贍部洲(閻浮提(えんぶだい)ともいう)が、我々の住む世界である。
さて、東勝神洲で石から猿(正しくは猴(コウ))が生まれた。ご存知のように、石女と書くと「うまずめ」と読む。子供のできない女のことである。その石からサルが生まれたので、「これはウソですよ」と言っているようなもの(陳舜臣 説)。
長い時間がたって、石ザルはサルと共に生活し、花果山の滝の裏の水簾洞府を見つけ、サルの群れの王者となって美猴王となのる。
ここに最初の疑問が生じる(^_^)。石ザルはサルの群れで暮らしていた。「花果山福地 水簾洞洞天」と書かれた石碑を見つけて、それをすらすらと読む。それで水簾洞府というのだが、いつ字を憶えたのだろう(^_^)。それでも、サルが数十年生きていても気にならない。こういうことはあちこちにある。人によって、この気になる部分と気にならない部分が違うだろう。
ここでバカバカしいとやめるか、これは面白いと思うか。これは他の武侠小説にも共通する。
これがこの物語の発端で、天界を荒らし、観音に捕らえられ、後に三蔵法師のお供をして、取教の旅に出る。
ここは本の紹介にとどめる。
詳しくは「たくせんの中国世界」に書く。そちらはネタバレを気にしない。全体を忘れてしまったころに、思い出すためのメモ帳である。
いま全十巻のうち第一巻を読み終えたばかり、追記するかも知れない。