2012年11月06日

パワー・オフ

井上夢人   集英社   1996.7
     paweroff.jpg

 パソコン、その中のインターネットの問題を考えた、SFらしいSFである。
 発行年は1996年だが、1994年の8月に雑誌に掲載されたという。日本語版ウインドウズ95が出たのが95年の終わりころ、それによって日本のパソコン使用人口が急増したころである。わたしがバソコンを始めたのもその頃である。
 そのとき、この小説のような話は、思いもよらなかった。当時この小説を読んで意味が理解できたかどうか。
 それから17年もたつ。今のパソコンなどとインターネットの隆盛を予言したような小説だが、今の技術でもこの小説世界のような生命体ソフトを作ることは難しいのではないか。作るという話を聞かないところをみると不可能かも知れない。
 もし、具体的な機体名や数字などがなければ、ウイルスやワクチンソフトやそれを巡る人物の動きは、このまま今でも通用しそう。わたしでは十七年前の本の焼き直しとは見破れないだろう。
 SFだがかなり現実的。

 以下ネタバレ気味です。

 まず、防ぎようのないパソコンウイルスが流行り日本のパソコン利用者を震撼させた。ところが一週間後、そのウイルスのワクチンソフトがボード付きで売り出される。それが予約を受け付けている間に、フリーソフトの同じようなソフトが出た。
 問題はウィルスの発生がらソフトが売り出されるまでの期間の短さであった。ソフトだけならある得るかも知れないが、ボード付きでそれを用意できるのか。
 そのことから、ワクチンを売り出すためにウイルスを仕掛けた会社が浮かび上がる。
 騙されてウイルスソフトを開発した人が、事態に気づき、フリーソフトを出した。
 さて、新しいパソコンシステムを考えたふたりの人物がいた。パソコンも別々でいながら、協力して遺伝子のような仕組みで、自分で考えるソフトの開発である。パソコン内に住む生命体である。世代を重ねて、かなり高度なことができるようになり、人がソフトを考えると、パソコンがそれをよりすぐれたソフトに改良してしまうほど。
 ここで一台が先のウイルスの改良型をつくる。もう一台がそのワクチンソフトを作る。
 この関係が絶妙。なぜならウイルスを退治してしまうと、ワクチンも要らなくなる。それを避けるために、ウイルスの進化を促す。そんなことを考えるワクチンソフトなのだ。
 生命体は進化していき、もう止めることができない。それは悪いことではなかった。
posted by たくせん(謫仙) at 07:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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