2012年12月02日

もろこし銀侠伝

秋梨惟喬(これたか)  創元社   2010.9
     morokosi.jpg
 時代武侠ミステリーである。中短編の連作ミステリーと言いたいが、これ、連作と言っていいのか。
 その昔、黄帝はさまざまな発明を行い、学問をはじめ文字も作り、統治のシステムも作った。
 しかし名君が続くわけではない。暗君のときのために一つの仕組みを作った。銀の板に破邪の符を彫り込んで、游という優れた男に与えた。游は二度と宮廷には現れなかった。

 というのが、始まりである。その「銀の板(銀牌)」がその時代の優れた人物に受け継がれていく。その銀牌を持った名探偵(銀牌侠)の物語なんだが、連続性も関連性もなく、話が始まり終わる。連作というより銀牌侠のアンソロジーであろう。
 武侠というのには意味がある。武侠でないと謎が解決しない。
 著者は武侠のオチの代表として金庸の侠客行を上げている。普通のミステリーとしては使えないトリックなのだ。ここでも同じ。
 また登場人物に知っている名前が多い。
 燕青・廬俊義といえば水滸伝でおなじみ、その燕青が梁山泊に入る三年前の話とか。
 青霞という女仙らしき人物が登場するが、その名は香港の美人スター林青霞からとった。東方不敗役で有名なスターだ。
 さて、物語は伏線が多い。あるこそ泥が何かを盗んだらしい。被害者はこそ泥を拷問にかけて殺してしまう。しかし、そのこそ泥は大金を見ても手が出ないような気の小さい男。大事なものには手を出すはずがない。こそ泥の立ち回り先の老婆まで拷問を受けて殺される。
 なんて話が進むが、武侠的オチなので普通に考えては絶対に解けない。話が進むほど謎が増えてくるが、探偵役には焦点が絞られて来ている。

 自称に愚弟を使うことがある。「じふん」とカナをつけてある。意味は「わたし、おれ」だ。一時「わたしは」というのを「じぶんは」と言うのが流行ったことがあったが、その頃に書いた小説だろうか。異様な感じがする。

 この話、まだ続きが出ている。楽しみだ。
posted by たくせん(謫仙) at 10:08| Comment(1) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。
Posted by 職務履歴書例 at 2013年01月25日 13:51
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