2012年12月19日

もろこし桃花幻

秋梨惟喬   創元社   2012.3
     morokosi3.jpg

 桃花と言えば桃源郷を思う。そう桃源郷のような村を舞台にした、理解できない事件が起こる、長編である。
 元末、流賊が勢力を増していた。流賊に襲われると、その町の生き残った人も生きていくために流賊になることが多い。
 沈軍も三万にふくれあがっていた。流賊としてはかなりの勢力である。
 ところが、軍もいなくなった小さな渓陵城(町)で足止めされてしまった。予定ではここでひと攻めして食糧を補給して次の城へ向かうつもりであった。ところが簡単だと思っていた渓陵城がいくら攻めても落ちない。長引いたため、次の城へ向かうだけの食糧が足りなくなってしまった。こうなっては、渓陵城から食糧を補給しなければ壊滅してしまう。かといって、全然犠牲者のいない城から食糧を渡すと言われても、罠だと思ってしまう。双方が困ってしまった。
 この状況は腑に落ちないが、偶然こんなこともあったとしよう。
 この均衡を破るために、双方が裏の計画を立てるが、それがどのような計画かは言わない。そのため読者には謎になる。
 この表の戦いを背景に、桃源郷のような村で裏の不思議な事件が起こる。

 ことが終わってから謎解きをされても、えっそうだったかしらと読み返ししてしまう。どこか探偵が隠しているような、著者がわざと説明しないで謎にして、物語を進めていくような、読者だけが知らないような、落ち着かない気がする。そのようにするため、四川から科挙を受けようと都に来ていたが、望みがなくなって帰ろうとする陶華という青年を主人公にする。これが説明不足の理由になる。
 まわりの人はいろいろ知っているが全部ではないので話は終わりにできず、主人公の陶華だけは何も知らないので、同時に読者が知らないので、物語というか謎が成り立っているような感じだ。
 二度読みしてみると、たしかにこの謎は成立するのだが、それだけの力・能力があったなら、こんな難しいことをしなくてもいいのではないか、膠着状態を破る簡単な方法があるのではないか、というストーリーに対する疑いが生じる。
 アイディアは素晴らしいのでお勧め。題名に恥じない。
posted by たくせん(謫仙) at 09:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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