先日、謫仙楼で月を愛でながらの碁会があった。そこで印象に残った一局。
黒 謫仙 6目半コミだし
白 小嫦娥
黒は小目、白は二連星で始まった。右上は桂馬のシマリを打った。
もうひと隅の小目の黒に、白は「氷河倒瀉」でかかってきた。わたしは「詩仙在楼」で穏やかに受けたが、白はいきなり「天下無狗」を打つ。
始まったばかり、根拠はなくても「千里流砂」で軽く飛び出してかわす。「斜打狗背」で追撃してきたが、「白砂青松」で不安はない。白はさらに「及時驟雨」で追撃してくる。
手抜きして「大鵬展翅」で辺に向かった。
白は「百花錯拳」でゆるみがない。「檎龍手」「鷹爪手」はいつものこと。「落花流水」「沛然有雨」など交わしているうちに、盤面の半分が決まりかけた。地合いは黒がリードしているが白の勢力は侮れない。黒は「飛龍在天」を決行した。月夜なら白の「波濤千里」からは「万波嘉娜」で逃れることができる。これで白を分断したが、打ちすぎであった。黒は「見龍在田」で活きるが、まわりに白の「天羅地網勢」ができあがった。薄いようだが、破る手が見つからない。
「浚波微歩」で後ろに回り網の中で活きようとしたが、白の「七星向月」が完成して「天昏地暗」にされてしまい、40目近い白地ができた。
最後の勝負手として「開天闢地」を打つ。白は根拠を奪おうと「追魂奪命」。これを「一陽指」で突き破り、さらに「好久強酒」を連発し劫にする。こうなると白の壁が「雲海隠隠」としてきた。
黒の劫立てとして一眼の「天昏地暗」を活きる手が幾つかあり、この劫は勝てるとふんだのだが、白は劫を打ち抜いてしまった。「天昏地暗」を活きて40目の白地がなくなったが、劫を抜かれた後、さらに一手加わっては「開天闢地」の黒がもたない。「老虎渡河」で渡ろうとしても、白は「亜及入玄」で動ぜず、勝ちましたと「青天雨傘」。
黒の「謫仙喝酒」には、白は「大鵲啄虫」で黒2目を啄む。いまとなっては大きい。盤面でも勝てなくなって投了した。
プロ棋士の講評では「天昏地暗」が一眼になったとき、「神龍揺尾」を打てば活きたという。しかし高段者でもなかなか気づきにくい手だ。その前に「浚波微歩」のかわりに「小林覚悟」でもよかったというが、これは冗談だろう。
「在楼観月」が判りやすかったか。
それには小嫦娥は「わたし相手に「在楼観月」は無理じゃない?」とにっこり。二回目の投了となった。
記 謫仙
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