2013.6.17記
書き下ろしと書いてあるが、解説は平成3年(1991)に書かれている。どこか誤植かと思っていたら、新版だった。元は1991年9月発行。実際は十二国記より先に書かれた。十二国記の序に相当する。なお十二国記は、初めから十二国記という名があったわけではない。のちにその名をつけた。
十二国記は、現実世界の日本と異世界の十二国を巧みに組み合わせて書いているが、中心は十二国であり、現実の日本は十二国から見た日本である。
それに対して本書は、十二国記の日本の部分を、現実の日本からの視点で書かれている。
それは不思議な恐怖の世界になる。これだけ読むとホラー小説だが、わたしは十二国記を先に読んでいて、アニメも見ているため、ファンタジーとして読めた。
10歳の頃に1年間神隠しにあった高里という高校生がいた。神隠しの間のことは覚えていない。それからいろいろと不思議な事件が起こる。ここで既読感が生じた。
事件は高里を守るために「異世界からきたもの」による。しかし、高里はそれを知らない。周囲は確信が持てないものの高里を疑っている。それがいじめに近くなると「異世界からきたもの」が高里の知らない間に排除しようとして事件をおこす。だんだん規模が大きくなり大量殺人になっていく。
そうして高里は神かくしのときのことを思い出して、自分の世界は十二国の異世界であることを知る。
高里は、嘘を付いてはいけないと祖母から厳しく躾けられていて、人を疑うことを知らない。「洗面台の水を零したのは誰か」と言われて正直に「知らない」と答える。ところが弟が「兄がやった」と言ったため疑われる。形だけでも謝ればよさそうだが、それでは嘘をついたことになるために、謝ることができない。雪の中に立たされて、神かくしになる。
このあたり、わたしがもっとも共感したところ。
風の海 迷宮の岸 の裏の話といえよう。