2013年07月04日

草すべり

草すべり その他の短篇
南木佳士(なぎけいし)   文藝春秋   2008.7
     kusasuberi.jpg
 この本は紹介しようかどうか迷った。保留していたのだが、紹介することにする。
「草すべり」とは浅間山(2568)の登山コースの一部である。
 浅間山は車坂峠から(つまり西から)第二外輪山(トーミの頭・黒斑山など)第一外輪山(前掛山)そして浅間山になるのだが、浅間山は噴火しているので入ることはできない。
 第二と第一の間に湯の平という低地がある。
 トーミの頭から湯の平に下りる途中に草すべりというところがある。逆にいえば、湯の平からトーミの頭・黒斑山への登り道でもある。

  地図 参照

 主人公は浅間山近くの病院に勤務する医師で、五十歳を過ぎて山登りをはじめた。そして子供のころに心に留めた女性から連絡があり、ふたりで車坂峠から草すべりをえて前掛山まで往復する話である。
 文章はいいし、題材もいいのだが、読み終わった後、「それでどうしたの」と問いかけたくなる。
 山を楽しんでいることが伝わる文だが、エッセイのような、自叙伝のような内容で、小説としてはいろいろと物足りない。それでその他の短篇三作は読まずにいる。それで紹介するのは気が引けるのだ 著者は芥川賞を受賞したこともあるが、本職は主人公のように浅間山近くの医師である。
 この本を知ったのは、ときどきコメントを書いてくれるオコジョさんの紹介による。なにしろカバーの写真はオコジョさんが撮影したものだ。トーミの頭から下りる道の険しさが伝わってこよう。

参考  http://www.mtlabs.co.jp/shinshu/hike/asama.htm
posted by たくせん(謫仙) at 12:35| Comment(2) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
『「それでどうしたの」と問いかけたくなる。』と言う感想は多くの人が思うでしょうね。
南木佳士の作品には、そういったところがあります。もっとも村上春樹もそういう作品が多いですが・・・
移り行く、時の中でも淡々と心象を描いていく・・・
劇的なことは起こらない・・・
多々、山を歩いてきただけ・・・・
さまざまな思いをひきづりなから、命とはという永遠の問い・・・
作者にも答えは出ていないのでしょうね。そんな作品があってもいいのではと・・・

読んでいただきありがとうございました。そして、写真の紹介も・・・
Posted by オコジョ at 2013年07月05日 09:55
オコジョさん
先日、他の小説も読みました。さらに印象が薄くて、小説というよりエッセイにした方がよかったのではないか、と思いました。あるいは登山記録。
わたしが芥川賞作家の小説を読んだのはこれが最初かと思います。
医師だけに日々命を見つめる仕事をしていて、その開放された貴重な一日、なんでしょう。
わたしが浅間に行ったことがあれば、また違った感想になるのでしょうね。
Posted by 謫仙 at 2013年07月06日 07:26
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