2013年07月09日

くれる(呉れる)

くれる、という言葉がある。
普通の意味は、
1、 人が自分に、または自分の側の者にものを与える。「いつも姉が小遣いを―・れる」「友達が妹に花を―・れた」(OCNのWeb辞書)
 これには違和感がない。

 物やサービスがAからBに移動し、与えるAは「Bにやった」、貰うBは「Aがくれた」。

 わたしが勤めていたある会社のA部長は、取引先に謝らなければならないとき、「許してやってくれ」と言っていた。
 これにはわたしは、とてつもない違和感を覚えていた。腹が立つと言ってもいい。いったい誰の言葉だ。
 取引先の電話に出ているB担当者のC上司が、B担当者に向かって言う言葉ではないか。
 もしA部長がBさんとCさんに謝り、その上でCさんがBさんに向かって、「B君、Aさんは謝っているので許してやってくれ」と命じる。それなら「許してやってくれ」に違和感はない。
 謝るべき人が謝らずに、謝られるべき人に「許してやってくれ」と命令しているのがA部長の言葉だ。
A 「許してくれ」
C Bに向かって「許してやってくれ」
B 「許してやる」

 ただし、「くれる」には「やる」と言う意味もあるようだ。
2、自分が相手にものを与える。また、相手に対してある行為をしたり、加えたりする。相手を与え手より低い者として卑しめる気持ちを込めた言い方で、「くれてやる」の形になることも多い。「鳥にえさを―・れる」「盆栽に水を―・れる」「平手打ちを―・れてやる」
 また説明として、
3、(補助動詞)動詞の連用形に接続助詞「て」を添えた形に付く。
㋐ 人が自分に、または自分の側の者に対して何かをすることを表す。「手伝って―・れる」「秘密にしておいて―・れ」「母がセーターを編んで―・れる」
㋑ こちらが、相手に不利益になるようなことを与えることを表す。「痛い目にあわせて―・れるぞ」
[補説](1) 対等の間柄か、または目下の関係にある人に対して用いる。目上の人に対したり、尊敬の意を表す場合は「くださる」を用いる。
(2) 下一段活用であるが、命令形は「くれ」を用いるのが一般的。
(3) 3㋐は、その行為が好意的、恩恵的になされる場合が多いが、「とんでもないことをしてくれたなあ」のように、その行為を受ける側が被害をこうむったり、不利益になるときにも用いることがある。


 たしかに「やる」という意味もあるようだが、そこまでは認めても、上のような謝り方は誤りではないか。
 与えられた方が「くれる」と言っているのは、問題ない。与える方が「くれる」と言うのが、わたしが違和感を感じるところだ。
本当に「くれる」には「やる」と言う意味があるのか。使い方によって「やる」という意味に取れる場合があるということではないだろうか。
 わたしは今でも、「やってやる」とはいうが、「やってくれる」とは言えないのだ。
posted by たくせん(謫仙) at 07:22| Comment(2) | TrackBack(0) | 言の葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私の言語感覚も、与えることは「やる」であって、「呉れる」は使いません。ただ相手を目下に見て失礼な言い方をすることはないので、そのような使い方はしたことがない、とも言えますね。
ビジネスの場で、そういう言葉遣いをする人は敬遠します。私の取引先にはそのような人はいませんでした。
まるでテレビ時代劇で悪の親分が言っていそうな言葉ですね。でも辞書にあるなら間違いではないでしょう。
言われたら腹立つだろうな。
Posted by mino at 2013年07月11日 13:51
minoさん
わたしたちの生活の中では使う機会はない、ということもありますね。
だからこそ、使うときは強調されて、異様さを感じてしまいます。
犬や植物に向かって言うのは、おかしくは感じないので、決して無くはないでしょう。それが相手は年下とはいえビジネスの相手に言う言葉か。という言語感覚の驚きです。
具体的には、加害者が被害者に「許す」ことを命令するおかしさなのですけど、地方によってはそう使うところもあるかもしれません。
それはそれで学習不足と思えますけどね。
Posted by たくせん at 2013年07月12日 11:48
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