2013年12月17日

ファンフェスタ余話 指導碁

 ある二段子がいた。黒嘉嘉に指導碁を打って貰っている。見ると二十目強の石が死んでいる。十目ほどが取られている。わたしが見たとき、さらに二十目弱の石が死んだ。合計五十目ほど。
 それでもまだ打っている。死石が大きくなるだけ。六十目を越えた。ようやくそこを諦めてヨセを打ち始めた。
 黒嘉嘉は時々顔を上げて、二段子の顔を見る。
 あとでその二段子と話す機会があった。
「どうして投げなかったの。ジャージャが時々『どうして投げないの』という表情でみていたのに」
「指導碁なんだよ。勝負を争っているんじゃない。お金を払って教わっているんだ。負けるのは当たり前だ。負けだからと投了するものではない。ヨセだって教わりたいんだ」
 これは微妙な問題だ。百目以上の差があってヨセの勉強になるだろうか、という以前に、指導碁のあり方の問題。これは意外に曖昧だ。時間なのか局数なのか。
 ここでは一局だが、一局とした場合4時間かけてもいいのか。わたしは他の場所で実例を知っている。一局ではなく一時間半としよう。三十分で終わったら時間までもう一局打つか、一時間講評や解説をするか。
 このあたり、阿吽の呼吸でやっていては初めての人はとまどう。
 あっという間に潰されてしまって「これで終わりです」では、お金を払う身には納得できない。かといって延々と時間をかけられては先生が困る。
 このように理屈をこねて、先生の機嫌を損じては、おざなりに打たれてこれまた勉強にはならない。

 中山典之さんが書いていたことがある。手元に本がないので趣旨だけを理解して欲しい。
 日本棋院では一局一時間半で◯千円、というように決まっていた。(現在はどうか判りません)
 ある時、先生が長考を繰り返した。一時間半が過ぎていく。「延長するには追加のお金がかかりますが」と係りの人の声。
 指導を受けている人は、「冗談じゃない。先生がひとりで時間を使っているではないか。わたしは払いません」と言って支払いを拒否した。

 黒嘉嘉はテキパキと強く打っていく。
 この会の指導碁は無料で、特別ゲストの有料というのは、ある所に寄附するため。決して黒嘉嘉に払うわけではない。有料といっても寄附するつもりで払っている。しかし、二段子のように「有料の指導碁」と思う人がいてもおかしくない。現実にそうなのだから。
 慣れた先生なら、大差ならば、先生の方から「このくらいで、終わりにしましょう」と声をかけるところ。それはいまの黒嘉嘉には無理。
 さらに一局や二局打って貰っても(教わる、という)、それで強くなるわけではない。楽しく過ごさねば意味がない。

 指導碁についていろいろ考えさせられました。

 Mさんがわたしに言う。
「ジャージャー(嘉嘉)さんて、いつもあんなにブスッとしているの」
「いや、そんなことはない。日本語が判らないので、雰囲気が飲み込めないんじゃないかな。食事の時、コーヒーのコーナーに来たので、『コーヒーですか』と言ったら、にっこりしたよ。指導碁の時だって、ニコッとしたもの」
posted by たくせん(謫仙) at 07:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 囲碁雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして。私もプロに教わることが多いですが、投げ場が難しいんですよね。ある女性の先生とは対局中も話し合いながら打ったことがあります。そうすれば、間違いを指摘してもらえますし、極端な差ができることもありません。しかし、本気で実力を楽しみたいという人には不向きでしょうね。さようなら。
Posted by 横浜くぷくぷ at 2013年12月22日 17:36
横浜くぷくぷさん
 投げ場が難しいのはわたしも常に感じるところ。しかも先生にもよりますね。
 女性棋士は、レッスンプロになりがち。つまり指導碁のプロが多いので、間違いが少ないでしょう。
 しかし本来のトーナメントプロがそのままレッスンプロになれるわけではない。これが中山典之さんが書いていたことですね。
 お客様の様子を見て、この人はここを教えればよい、そこは細かいことを言っても理解できないと判断して、対局中でも手を教えながら打つ先生。あとからまとめて説明する先生。その判断ができる人がプロだと思います。

 小林千寿先生が、あるときテニスの指導を受けたときのこと。
 こちらがどこに打っても、先生はこちらが一番打ちやすいところに打ち込んでくる。これがテニスのレッスンプロだと思った。
 そんな話をしてくれたことがあります。

>本気で実力を楽しみたいという人
 レッスンプロは、そういう人にはそれなりの打ち方をしますね。ただこの大会のようなイベントでは大勢を相手にしているので、こちらの希望通りにはなりにくいと思います。
Posted by 謫仙 at 2013年12月23日 08:02
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