2007年04月18日

神々の山嶺

夢枕 獏   集英社   1997.8

 冒険登山の掉尾を飾る小説である。
 冒険登山は、初めの頃は処女峰を目指した。最高峰のエベレストが登頂されると、目標が変わってくる。
 例えば、無酸素登山・単独登山・別な難しいルートからの登山・冬季登山・など。
 それがすむとそれらを組み合わせる。

  エベレスト南西壁冬季単独無酸素登山

 もうこのような冒険登山の時代は終わったのに、これに挑む男の話である。
 ライバルの長谷常雄は、同じようなことを考えだが、雪崩にあって死ぬ。
 長谷常雄には、はっきりしたモデルがいる。登山家長谷川恒男(1947〜91)である。パキスタンのウルタルU峰への初登頂をめざした長谷川恒男は、1991年10月10日、突然の雪崩に襲われ、遭難死した。

 更にエベレストにおける一つの謎。
 1953年にヒラリーがエベレスト初登頂を記録したが、その29年前、1924年にマロリーがエベレスト登頂を成し遂げたかも知れないのだ。
 マロリーの遺体と彼の持っていたはずのカメラの捜索。そこにフィルムがあれば、登頂の記録があるはず。
 このふたつのテーマを中心にして、物語は展開していく。

 1997年8月にこの本は発行された。そして2年後の1999年5月1日に調査遠征隊によって、マロリーの遺体が発見された。そのニュースに接したとき、改めて、この本のすごさを感じたのである。
posted by たくせん(謫仙) at 07:51| Comment(2) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
夢枕獏さんのこの作品は、大長編なのですが、一気に読みました。
井上靖の『氷壁』をうわまわる、人物の心理が描かれ、山岳小説の傑作だと思います。
構成が見事で、山の描写もおざなりでなく、作者の山の愛が感じられます。
長谷川恒男の本も持っていますが、
エベレスト登頂は永遠の謎なんでしょうね。

マロリーのエベレストについては、たくさんの本がでてますね。
第6キャンプで待っていた、スマイス「キャンプ・シックス」は名著ですが、ずっと廃版のようです。私は時折、書棚からぬいて見ます。

それにしても「マロリー&アーヴィン捜索隊」というロマンを求める人がいるというのは良いですね。
Posted by オコジョ at 2007年04月18日 09:00
オコジョさんの指摘する本は、わたしは読んでいないのですが…m(__)m。
わたしがこの本を読んだのはあの捜索隊が出る前です。だからまるで小説を読むような話なので驚きました。
夢枕獏さんは、その前に「わたしの頭には200冊分のアイディアがあって、一生かかっても書ききれない」と言っていましたね。それでこの本は100冊分のアイディアを使って書いたと。
薄い(内容が)本なら数十冊書けそうに思いました。
結局フィルムはありませんでしたが、それはともかく、「マロリー&アーヴィン捜索隊」の捜索を出すとは「ロマンですなぁ」
Posted by 謫仙 at 2007年04月18日 19:59
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