2014年05月24日

異体字の世界

異体字の世界  旧字・俗字・略字の漢字百科
小池和夫   河出書房新社   2007.7

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 日本人が普通に読み書きする漢字は約二千字。多くても五千字で、それ以上となると、使いようがないだろう。同じ漢字は一字とする。
 ここで「同じ」とは何だろうか。明朝体・行書体・楷書体・草書体などは、書体が異なるが同じ字である。
 沢と澤はどうか。字体が異なるが同じ字、つまり異体字である。
 では花と華はどうか、いちおう異体字であるが、日本では別な字種と考える。
 実際に使われている漢字はどのくらいあるだろうか。なぜ異体字ができるのか。そんな事情を解説している。
 
 現在わたし(謫仙)は、仕事の上で異体字に悩まされている。「高」と「」、「崎」と「ア」、「辺」「邊」「邉」の差などかわいいもの。
辶の点を一つにせよ、「辺」の点を二つにせよ、旁を「刀」ではなく「力」にせよ、土の右上に点をつけよ、などという注文があるのだ。
「者」「者」、の差など一目見ただけでは区別できない。MSゴシックの小さい字では細かい部分はつぶれてしまう。インターネットでは表現できない字も多い。

 正字俗字という区別もある。よく略字(新体字)をやめて正字(旧字)を使え(仮名遣いも旧に)という人がいるが、旧字体にも異体字は多く、新字体(略字)が正字だということも多い。戦後のどさくさで略字にされたようにいう人がいるが、略字化には五十年以上の流れがあった。
 たとえば「恐れ入谷の鬼子母神」の鬼の字は角がない。角のある活字が使われるようになるまでは普通であった。こうなるとどちらが俗字か。旧字といえども明治の時代に定まった新しい字体が多い。
 字体表も教育と工業では考え方が違う。そして戸籍の漢字を認めていく。多くは間違って書いてしまったとか、これが正字だと勘違いした、新しく作ったなどだ。文字数は無限に増えていく(正しくは、増えるのは少なく、多くは知られていなかった字が表に出る)。
 異体字は少ない方が望ましいし、その努力もあったが、その流れを一気に覆すことが起きた。パソコンやケータイの普及である。増えた異体字を吸収してしまった。
 パソコンも字体が変わっていく。winビスタで、従前とはかなり変更されている。わたしは気づかなかったが、いわれてみると変わっていた。
 葛飾区の「葛」も問題だが、「飾」のヘンも新旧のパソコンでは違っている(いまwinXPとwin7 両方のパソコンで葛飾区のHPを見てみると違った字で表現される)。

 正字と言われるものの多くは康煕字典の字体だが、ではもっと古い時代はとなると別な字を使っていたことが多い。どちらを正字とするか。
 たとえば「青」は下が円を(康煕字典で使われた)正字という人がいるが、唐の時代は今の「青」と同じだった。
 囲碁界には張栩九段というトップ棋士がいる。「チョウ・ウ」といわれるが、わたしのATOKでは「栩」は「ク」という音読みだけがある。この栩の字が訓読みでは「とち」だという。
 先日のASKAの事件でこの「栩」の字が出てきた。「とち」と仮名が振ってあり、なるほどと膝を叩いた次第である。

 異体字とは、正字・俗字・古字・別体・偽字・略字などの総称。常用漢字はどのように決まり、人名漢字などで混乱しているのは何が原因か。奥深く驚きに満ちた本である。
posted by たくせん(謫仙) at 07:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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