2014年12月09日

万能鑑定士Qの事件簿 V〜Z

万能鑑定士Qの事件簿 V
2014.9.27記
松岡圭祐   角川書店   2010.4

 万能鑑定士Qの事件簿 T U  で大混乱に陥った日本社会が、何事もなかったかのように元に戻っている。それはあり得ないが、それを別にすれば、この巻単独では、破綻を見せていない。もちろんあちこちに無理はある。しかし、それが小説が成り立たないような決定的な破綻はせず、物語は進んでいく。
 急に売上が落ちた人気アパレルショップ。急に英語の試験で満点を取った赤点レベルの女子高生。音で共通する詐欺犯罪が潜んでいた。
 流行音楽の移り変わる中で、一度頂点に上り詰めた男が、没落しても過去の栄光を取り戻そうと詐欺を繰り返していく。その天才的な詐欺ぶりが中心となっている。その詐欺はかなりの集団でやらねばできそうもない。しかし、犯人はひとりしか出てこない。
 最後には破綻してしまうが、凜田莉子を真の意味の天才と賞賛して、詐欺人生の終わりを決意する。
 美少女系の主人公凜田莉子が、次々に一般の人が知らないような知識でその詐欺を暴いていく。これも本来は無理なのだが、この巻単独では、そのような知識を持つ天才として登場するのでかまわない。つまりこのような大天才がいたならば……、というSFに近い。

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万能鑑定士Qの事件簿 W
2014.10.22記

 多くのポスターオタクがいる。ある映画ポスターの所在地で、放火事件が起こる。しかも連続する。
 なぜ放火するのか、目的は何か。犯人はなぜあるポスターがそこにあることを知ったのか。これらの謎解きが今回の主題。
 これらの映画ポスターは実在したものばかりらしい。
 万能鑑定士はポスターの破片から何のポスターか、その価値まで当てる。そんな知識を一夜漬けで手に入れられるものだろうか。勉強のための資料集めでさえ難しい。また暗号も解く。ここまでうまくいくのかと思ったが、そこが天才。

 さて、わたしはミステリーファンではないので、このミステリーが上出来かどうか判らない。
 問題は犯人の目的が判ったとき、それで連続放火をするほどのものか、と思ってしまうこと。
 目的が小さい。しかも放火の必然性がない。放火をしなくても目的を達することができるのにと思う。むしろ放火しない方がいいだろう。万一の時、微罪になるから。だから結末もなんか拍子抜けの感じになってしまう。

 不思議に思ったのは、ポスターオタクが、その半生を犠牲にして手に入れたポスターを失ったことより、それで火災保険からいくら貰えるかと評価ばかり気にしていること。きちんと市場価格で評価してもらえるのはうれしいに違いないが、それで納得できるのか。本人にとってはかけがえのないものであるはず。もちろん焼けてしまったので、もう取り返せないにしてもだ。
 いつものことながら、この作者は、欠点あっても小説はおもしろいのだから、なんとかならないのかと、つい思ってしまう。

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万能鑑定士Qの事件簿 X
2014.11.15記

 今回はパリ編。高校時代の恩師、喜屋武(きやん)先生と一緒にパリへの珍道中、喜屋武先生はお間抜けのようでいて、けっこうしっかりしていて、凜田莉子の人格形成に影響を与えているようだ。
 新たな問題は、莉子がフランス語を習い始めて半年で流暢に話すこと。さすが天才…で済ませられるのかな。

 高校時代の同級生の楚辺が勤めるパリのレストランで食中毒事件が発生。楚辺も仕入れに関わったフォアグラが問題だった。
 莉子は真相究明に乗り出す。犯行の手順は幼稚だが、内容の意味するところは深い。
 事件が起こるまでの前半はだれる。それでもけっこうおもしろく読めた。
 ルーブル美術館の話、本当かなあ。良い美術品は感動を受ける、には納得。鑑定士はそこを見る。でも優れていればニセでも感動を受けると思うのはわたしだけか。

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万能鑑定士Qの事件簿 Y
2014年11月26日記録

 雨森華蓮は国際指名手配されている詐欺師で「All-round Counterfeiter(万能贋作者)」と呼ばれていた。
 この雨森が日本でも大がかりな詐欺事件を展開するする。莉子と同じ程度の鑑定眼を持ち、二人の対決といった形になる。
 毎回のことだが、莉子の知識は驚かされるが、それでいながら今回は、国際刑事警察機構(インターポール)についての知識のなさに驚く。専門外ではあるといっても、そのレベルが…。もちろん著者は知っている(^。^)。
 著者の知識にはいつもながら驚く。しかし、本当かと疑ってしまうのはいつものこと。読むときは本当のことと仮定して読んでいるのだ。
国際指名手配されている雨森の詐欺は大きな団体と思わせて、事実上一人で行う。たった一人で、世界のあちこちで大がかりな詐欺を起こせるものか考えてしまう。けっこう、無理やりな気がする。
 そんなにも鮮やかに計画通りにことが運ぶものかどうか。だから天才詐欺師なんだが。
 莉子の推理なども、けっこう、無理やりな気がする。絶対にできないというわけではない。
 いつも同じ感想だな。

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万能鑑定士Qの事件簿 Z
2014年12月04日記

 店に持ち込まれた偽の金の延べ棒。小説の盗作騒ぎ。
 同時進行するカリスマ編集長の脱税疑惑。このカリスマ編集長が次の偽金の被害者になりそうだと予測し、国税局はその時のために、莉子にカリスマ編集長の下で働くことを依頼する。そこで5億円のペンダント紛失騒ぎが起こる。
 国税局がそんな目的で、民間人を送り込むことはあり得るのか。

 一番大きな疑問は、買った時は金塊なのに、時間がたつと合金に化ける不思議。一目見て、金ではないとわかる代物。どんなトリックかと思っていると、最後の種明かしで、合金を金で覆った形で出てくる。比重も金と同じで、これで金の鑑定士が本物と認定するが、これなら時間がたっても、一目で偽とは判らないはず。
 トリックが成立しない。
 金3% 鉛37% 鉄26% 銅18% その他。金以外はどれも金より軽い物ばかり。この成分比率で金と同じ重さにはならない。その他がよほど重い物ならあり得る。そこが肝心だが、その話はない。
 レーザーで偽の金の延べ棒を切断する。しかし俗に言うカミソリで切ったように、レーザーできれいに切ることができるだろうか。
 切った断面を見せるトリックもお粗末。買った人は持ち帰ったとき、確認しそうなもの。

 ある弁護士が出てくるが、仕事場所とか仕事とか、現実離れしている気がする。

 もう一つ、本を出版して委託販売にすると、売れる前に問屋が肩代わりして、出版社は代金を受け取れるという話がある。そのため全く売れる見込みがなくても収入になる。
 取次店が出版社に支払うのは7割だが、これは貸し出し。出版社は本が売れなければ返さねばならない。全く売れなければ全額返金し、既に支払い済みの紙代・印刷代・製本代等は自己負担で、さらに返品された本をお金をかけて処分しなければならない。処分しないと財産と見なされ、倉庫代もかかり、場合によっては税金を払わねばならない。
だから、売れない本を何冊も出しても、損失が増すばかり、決して儲かるものではない。

 それでも小説はおもしろいのだ。
posted by たくせん(謫仙) at 10:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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