睦月童(むつきわらし)
西條奈加 PHP研究所 2015.3
SF時代小説といえよう。
日本橋で下酒問屋(くだりざけどいや)を営む平右衛門が、東北の村から座敷童のイオを連れてくる。このイオを見ると、後ろ暗い人は、みな震えだして、悪事を白状してしまう。平右衛門の息子の央介も更生した。
睦月(むつき)神の加護を受けたイオはそんな能力があるのだった。その超能力者を生み出すのは睦月の神とその里。
そして一年間、央介とイオはいくつかの事件の解決に加わるが、そのあたりは江戸の人情話の様子。人は誰でも暗い面があるだろう。そんな人も暖かく包む。
イオは自らの力に動揺することもあるが、央介が「罪を映すのではなく、良心を映しているのだ」と気持ちを楽にさせる。
一年経ってイオは睦月の里に帰ることになる。
武家の小出はイオとは同郷の女ナギを愛したため、睦月の里の秘密を知ることになり、ナギの望みで、この里をなくすことにした。央介はイオと睦月の里に行く。同じ時に小出も別に行く。
睦月の里は睦月の神の摂理で支配されている。八百比丘尼の妹を頭に、若くて美しく見える女性ばかり。だが、それが原因で、その里は既に滅亡の途中にあった。
小出は睦月の神と里を滅亡させてしまう。
個人ばかりでなく社会でも闇の部分がある。その闇とどう向き合うかを問われ、少し重い話でもある。
2015年08月01日
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