2007年05月25日

猫弾きのオルオラネ

  夢枕獏  早川書房  (初版1989)  完全版1996.4
 三匹の猫を弾く、不思議なオルオラネじいさんの、不思議な短編集である。
          nekohikino.jpg
 不思議な猫の名前はイルイネラ・ショフレン・マレット。
 更に不思議な動植物。
 これらが醸し出す、童話のような暖かいお話。

 ねこひきのオルオラネ
 猫を酒に酔わせ、体をいじるといい声を出す。この声をのどを押さえることによって音階を変える、そうして音楽を演奏する、オルオネラじいさんの登場である。
 劇団がつぶれて失職した青年が、酔いつぶれてオリオラネに助けられ、猫を弾く。その不思議な体験談である。

 そして夢雪蝶は光のなか
 松本と上高地近くの山を舞台にした、厳冬に羽化する蝶の話。
 女に振られた青年が、酔いつぶれてオリオラネに助けられる。同じく訳ありの少女がいる。
 そこで雪冠茸(ゆきんぼう)の味噌汁をごちそうされる。
「あたしはちょうちょを見るためにね、お山から降りてきたと、そういうわけなんでございますよ」
 オリオネラの語る蝶は夢雪蝶。上高地のちかく幽明谷に、10年に一度、羽化する。
 氷でできた羽を持つこの蝶は、厳冬の上高地に凍風鬼(グラーヒ)のくる日に発生する。雪冠茸(ゆきんぼう)を喰って育つ幼虫は厳冬の雪の下で羽化を迎える。
 これを見ようと単独登山する少女がいる。軽い装備では、凍死確実であり、オルオラネと青年は少女を助けに幽明谷に向かう。
 そして翌日、光のなかに夢雪蝶が大量に羽化して飛び立つ。
 松本に帰った二人は、猫を弾くクライマックスを迎える。

 天竺風鈴草
 安曇ヶ原高原にある山小屋に向かう青年がいた。途中でせっかく持ってきたワインを割ってしまう。そこでオルオラネと知り合うことになる。
 ここで知った不思議な草、成長して頭を地にさし、そこで地中に咲く、日本ではここに一本しかない天竺風鈴草。風に軸が揺れると妙音を発する。
 インドでアショカ王によって焼かれ、僅かに残った草が中国をえて日本に伝わった。
 だが、この草は人を狂わす魔の草であった。
 仏教の話のなかに必ず出てくる聡明なアショカ王が、この草を絶滅させようとしたわけだ。
(ストーリーが、前に読んだときとは異なるようだ。この版はかなり加筆訂正していると思う)

 こころほしてんとう虫
 心で欲しいと思ったことを叶えてくれる「こころほしてんとう虫」
 現実の苦しみを和らげ、心の疵を直し、一面の菜の花のなかで人を立ちなおらせる。

 年末ほろ酔い探偵団T

 年末ほろ酔い探偵団U

 ばく

 夢を喰うばく。だが悪い夢ばかり見つづけた人が、その夢をばくに喰われ、心の落ち着きをえたとき、ばくは悪夢ばかり喰ったため凶暴になる。オリオラネはもとの可愛いばくに戻す。
posted by たくせん(謫仙) at 17:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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