三匹の猫を弾く、不思議なオルオラネじいさんの、不思議な短編集である。

不思議な猫の名前はイルイネラ・ショフレン・マレット。
更に不思議な動植物。
これらが醸し出す、童話のような暖かいお話。
ねこひきのオルオラネ
猫を酒に酔わせ、体をいじるといい声を出す。この声をのどを押さえることによって音階を変える、そうして音楽を演奏する、オルオネラじいさんの登場である。
劇団がつぶれて失職した青年が、酔いつぶれてオリオラネに助けられ、猫を弾く。その不思議な体験談である。
そして夢雪蝶は光のなか
松本と上高地近くの山を舞台にした、厳冬に羽化する蝶の話。
女に振られた青年が、酔いつぶれてオリオラネに助けられる。同じく訳ありの少女がいる。
そこで雪冠茸(ゆきんぼう)の味噌汁をごちそうされる。
「あたしはちょうちょを見るためにね、お山から降りてきたと、そういうわけなんでございますよ」
オリオネラの語る蝶は夢雪蝶。上高地のちかく幽明谷に、10年に一度、羽化する。
氷でできた羽を持つこの蝶は、厳冬の上高地に凍風鬼(グラーヒ)のくる日に発生する。雪冠茸(ゆきんぼう)を喰って育つ幼虫は厳冬の雪の下で羽化を迎える。
これを見ようと単独登山する少女がいる。軽い装備では、凍死確実であり、オルオラネと青年は少女を助けに幽明谷に向かう。
そして翌日、光のなかに夢雪蝶が大量に羽化して飛び立つ。
松本に帰った二人は、猫を弾くクライマックスを迎える。
天竺風鈴草
安曇ヶ原高原にある山小屋に向かう青年がいた。途中でせっかく持ってきたワインを割ってしまう。そこでオルオラネと知り合うことになる。
ここで知った不思議な草、成長して頭を地にさし、そこで地中に咲く、日本ではここに一本しかない天竺風鈴草。風に軸が揺れると妙音を発する。
インドでアショカ王によって焼かれ、僅かに残った草が中国をえて日本に伝わった。
だが、この草は人を狂わす魔の草であった。
仏教の話のなかに必ず出てくる聡明なアショカ王が、この草を絶滅させようとしたわけだ。
(ストーリーが、前に読んだときとは異なるようだ。この版はかなり加筆訂正していると思う)
こころほしてんとう虫
心で欲しいと思ったことを叶えてくれる「こころほしてんとう虫」
現実の苦しみを和らげ、心の疵を直し、一面の菜の花のなかで人を立ちなおらせる。
年末ほろ酔い探偵団T
年末ほろ酔い探偵団U
ばく
夢を喰うばく。だが悪い夢ばかり見つづけた人が、その夢をばくに喰われ、心の落ち着きをえたとき、ばくは悪夢ばかり喰ったため凶暴になる。オリオラネはもとの可愛いばくに戻す。