北森 鴻 光文社 2003.7

前に ぶぶ漬け伝説の謎 を紹介している。その前編である。
京都の人さえ知らないといわれた、京都一の貧乏寺、嵐山の古刹大悲閣。その寺男、有馬次郎に奇妙な事件が持ち込まれる。
有馬次郎は逮捕されたことはないが元広域窃盗犯。その直感は鋭く、時には裏社会の情報さえ利用し、住職の助言もえて、解決していく。
大悲閣は実在の寺であり、わたしは行ったことがある。渡月橋から川沿いに20分ほど歩き、山道を登るのに20分もかからず到着するが、その様子は、 京都2 大悲閣(千光寺) を見てほしい。
これは小説なので、実際の寺とは差を感じることもある。
みやこ新聞の記者の折原けいが持ち込む最初の事件は、えげつないムンちゃん登場の話。
そのほか殺人のアリバイ作りに別な殺人事件とか。
時々有馬次郎が行く、居酒屋十兵衛の料理はいつもおいしそう。その主の弟弟子のやはり十兵衛という別なところにある店が、格落ちしてしまう。その原因を探ると、痛ましい事情があった。
というような、ちょっとやるせない話が多いが、基本はコメディーと本格ミステリーを加えような楽しい話。