2007年06月03日

妖星伝(七) 魔道の巻 

 妖星伝の解決編である。
 (一)から(六)までとはガラリと様子が変わり、哲学問答で終始する。
 純文学しか小説と認めない人には、理解不能の小説である。
   これは小説ではない。意見の羅列である。
   荒唐無稽でバカバカしい。時間の無駄だ。
   これは事実とは違う。
 これは、わたしの知っているある人の批評である。
 だが、わたしはこの本を半村良の代表作として推奨する。
                youseiden6.jpg
 日円と青円が霊船でナラカ「地獄=地球」から時空の外洋に乗りだすところから始まる。

 奪衣婆を見る。
「お上人。われらは死んだのでしょうか」
「たしかに。あれは衣領樹だな」
「ならばあの婆は奪衣婆ではありませぬか」

……
「十王経は偽経だそうな」
「ではこれは幻なのでしょうか」
「いや、われらの知識がこれを見せているのだ。……」


 外道皇帝はなぜ地球を妖星としたのか。
 遭難して地球にたどり着いた外道皇帝は、時間が意志を持ったことを知った。その警告を発するため、ここにいることを宇宙生命に知らせる方法を考えた。
 地球にいる黴のように張り付いている生物を進化させた。それは植物となり、動物となり、性別を作る。脊椎動物が出現すると、性を快楽とし、生物の進化を加速させる。
 そうして地球を生物が溢れる星とした。だが、地球はその生命同士が互いに啖いあう妖星となったのだった。ナラカとなったのだ。
 これほど目立つ妖星でも、宇宙ではチリに等しく、宇宙生命は気付かない。そこで人を発生させ、鬼道衆の霊で宇宙船を作る。そして自ら宇宙に乗りだすのだ。ポータラカの生物に知らせるために。その船に乗っているのが初めの二人である。

 「四苦八苦から脱しましたか」
 青円は歓喜に近い声で言った。
 生・老・病・死・を四苦。愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五陰盛苦を加えて八苦となる。
 四苦八苦から解放されれば歓喜するのは当然であろう。
 
 「ポータラカの友よ」
 外道皇帝は彼らに警告したのだ。
「時間が空間に対し支配力を持ちはじめている」


 意志を持った時間…それはどういうことか。
 時間とは本来物質の変化の量であったはずである。…だが時間は自己の存在を強化するために、変化を促進させようとする。…終末へ向かって加速されてしまうのだ。
 生命が海から陸へ上がったように、肉体を離脱して知性自体で存在する。これが宇宙の一般的状態であり、どうすればこの状態維持できるのか。これは意識の連続性であった。青円は意識を保持できず消滅してしまうことになる。
 地球生命の知性の中心である大日、即ち外道皇帝も未熟な存在であった。霊船なくしては宇宙に行くことができない。
 知性にも段階がある。弱肉強食こそ宇宙の真理であり、発達の遅いものは早いものの餌食となる。
 人は家畜を利用し啖う。同様に大日は人を利用する。利用したあとは、不要になった人はそのまま見捨てられ、滅びの道を辿る。
 智慧の曼陀羅の中心に常に坐す大日如来にとっては、地球の生命の代表は人である必要はない。
 地球に戻った日円の見たものは、地震・戦争によって滅びゆく地球の姿であった。
 しかし、壊滅した首都からエスパーが育っていた。日円はエスパーたちに外道皇帝のことを話した。
 最後に、なぜ外道皇帝はそれらのことをするのに日本を選んだのか。
 日本が一番そういうものを受け入れ、進化の引き金を引きやすい場所であったからだ。
posted by たくせん(謫仙) at 10:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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