2016年06月01日

継ぐのは誰か?

継ぐのは誰か?
小松左京   早川書房   1972.5

 地球の歴史では有名な恐竜の時代もあった。恐竜意外にもそれぞれの時期に繁栄した生物がいる。現在は人類(ホモ・サピエンス)の時代である。ホモ・サピエンス王朝はいつまで続くのか、ホモ・サピエンス王朝が滅んだとき、あとを継ぐのは?
 小松左京らしいこんな雄大なテーマの小説である。

 人類は完全ではない、こんな議論を繰り返す大学生たちのグループに、殺人予告が入った。どう防ぐか。実行不可能な形で事件が起こる。それを追及していくと新たな謎。
 43年も前に、ネットワーク社会の脅威を予測したような話で、書いた当時より、現在読んだ方が納得できるのではなかろうか。現代は電波で成り立っている一面がある。
 結局、殺人者は南米出身で、なんと人が声や音を操るように、電気・電波を操ることが出来る。そればかりではない、発電もする。
 殺人者の出身部族の一人一人が放送局になる。受信機になる。さらにコンピューターにハッキングもする。染色体数さえホモ・サピエンスより2対多い。
 捜索隊を組織し、アマゾンの奥地にその殺人者の出身地を訪ね、出身部族ククルスクを探すことになる。みどりの地獄アマゾンの描写もいい。
 ククルスクから接触があった。部族約千五百人全体が病にかかっていた。そして捜索隊の持っている薬を要求する。
 交換に新人類ホモ・エレクトロニクスの驚く歴史を聞くことになる。中南米に栄えたインカやマヤやアステカなどの先生役となった民族。白人の暴挙からたくみに逃れてアマゾンに逃れたという。
 そこに連絡が入る。あの薬は副作用があり、新人類ホモ・エレクトロニクスの生殖力を消滅させる。しかし、その連絡が入ったときはすでに全員に投薬済みだった。

 時代は二十一世紀の中頃かな。戦争がなくなって何十年という記述がある。しかしご存じの通り、第二次世界大戦後も戦争が絶えたことがない。これにより小説上の歴史には違和感が生じる。その延長の世界観にも違和感が生じる。その源は小松左京の未来への希望であろう。
 この小説が書かれたのは1972年、アップルの創業が1977年。これだけでも驚嘆に値する。
posted by たくせん(謫仙) at 10:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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