2016年07月14日

おしゃべりな訪問者

おしゃべりな訪問者
小松左京   筑摩書房   1975.7
     2016.6.26.jpg
 小説の形を借りた、歴史や思想の解説である。
 古ぼけたタイムマシンに乗り、時間旅行をして、歴史上の人物に架空インタビューをするという趣向。
 アウストラロピテクス属・クレオパトラ・秦の始皇帝・アステカ王モテクソーマ・元寇の高麗将軍金方慶・足利義満・大内義弘・本居宣長。最後に仏の影まで出てくる。
 著者の歴史についての相当な博識ぶりを披露している。また仏教論というか仏教哲学も読むに値する。
 いま読み返してみても、内容は古くないと思う。
 アウストラロピテクスは猿人なので、一方的にしゃべるばかりで相手は態度で示すのみ。意思は通じているらしい。現人類は必要以上に攻撃性を持っているとか。
 クレオパトラには、日本では卑弥呼をはじめ、何人も女帝がたっていると教えるとか。
 クレオパトラの目算違いは、ローマがあまりにも紊乱・野蛮・無秩序であったこと。
 金方慶は、日本の外交政策の無知のため、元によって高麗は壊滅的被害を受けた話。もっとも恨むのは元であるべきで、日本を恨むのは筋違いなのだが。
 足利義満の日本発展の大構想など。
 仏教においては、仏陀の語ったことと、後の仏教のあり方が、あまりにかけ離れている話とか。
 はじめは仏陀の像はなかったとか。地獄極楽はないとか。
 釈迦は答えないとした4つの問い。
 宇宙は永遠か、宇宙は有限か、霊魂と肉体は同一か、解脱したつまり如来は死後存続するか。
 これは考えても生活実践の上に何の関係もない。だから答えない。それにもかかわらず、後に大展開してしまった。

 こんな、著者の博覧強記ぶりを示す一冊。
posted by たくせん(謫仙) at 08:07| Comment(4) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 金方慶は、日本の外交政策の無知のため、元によって高麗は壊滅的被害を受けた話。もっとも恨むのは元であるべきで、日本を恨むのは筋違いなのだが。

この話をもう少し詳しく説明していただけないでしょうか。私は読んでいないのに、説明を求めてすみません。
Posted by 美少女 at 2016年07月16日 14:11
美少女さん
 元寇の話は一応はご存じと思います。
 元はフビライ時代に宋を滅ぼし、中国を植民地としました。今の中国北部は漢人として現地人扱いですが、南部(旧南宋)は南蛮人として、低く見ました。征服した建前で平穏でしたが、江南の旧宋の20万の軍は目障りでした。これを滅ぼそうとして、日本派遣を命じたといいます。そのときの舟や輜重などは多くが高麗の負担となりました。もちろん軍人も派遣せねばなりません。それで、根こそぎといえるほど高麗は疲弊しました。
このとき日本が、フビライの要望に対して、普通の外交的対応をし、形だけでも交渉に応じていれば、実害はないし、元も日本に対し侵攻する名目も無くなり、高麗もその負担がなかったと思われます。
 でも、ここで日本にしてみれば、そのような経験は無いし、高麗に対する配慮もする必要は感じなかったでしょう。早く言えば無知だったわけです。
 高麗がそうしてもらいたかったら、事情を知らない日本に対し、陰で事情を説明し、そうするよう配慮すべきではないかと思います。その配慮をしないで恨むのは筋違いというわけです。結果、日本は高麗に侵略された被害者になりました。
Posted by 謫仙 at 2016年07月16日 17:51
説明ありがとうございます。
本来は元がすべき戦争を、高麗は費用持ちで、代理戦争をさせられているわけですね。
代理戦争を拒否できなくて、攻め入った相手国を恨むのは筋違い。現代でもありそうな話です。
Posted by 美少女 at 2016年07月20日 17:26
美少女さん
そういえば、まさに代理戦争ですね。もっとも高麗王は北京にいたし、江戸時代の弱小藩のような立場でしょうか。拒否できない立場です。
ただ、元南宋の20万の兵を捨てるためという説もあり、日本が適切な対応をしても、やはり別な目的で同じことをやらされた可能性が高いと思います。
Posted by 謫仙 at 2016年07月20日 19:07
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